バブル後高値更新の日本株相場 上昇はどこまで続くか? – 日本経済新聞
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB159JZ0V10C24A1000000/
保存日: 2024/01/17 7:54
日経平均株価が一時3万6000円を超えたことを示すモニター(15日午後、東京・東新橋)=共同
能登半島地震、羽田空港での航空機衝突事故と波乱の幕開けとなった2024年。ところが株式相場では、そうした重苦しい雰囲気を吹き飛ばすような快進撃が続いている。東証株価指数(TOPIX)は年初から15日までに7日続伸。日経平均株価も次々と大台を塗り替え、15日には一時、3万6000円を突破する場面があった。約33年11カ月ぶりのバブル崩壊後の高値更新だ。ここまでの強い相場を誰が想像しただろう。
この急騰劇の背景はいくつかある。まず、単純に年が変わったことだ。前回(23年12月19日付)の「ザ・相場道」で、秋から年末にかけての円高の背景は投機筋のポジション(持ち高)の手じまいであり、年が明ければ収まるだろうと述べた。実際、その通りになっている。投機筋に限らず、多くの運用主体で年が変わればニューマネーが入ってきたり、新規のポジションをとりやすくなったりする。
年が変わったという点で言えば、新たな少額投資非課税制度(NISA)が24年からスタートしたという大きな材料がある。無論、新NISAの資金が日本株を買い上げたというのではない。実際、NISAの人気は米S&P500種株価指数や全世界株式を対象とするものだからだ。日本株市場にはNISAの資金はまだそれほど多く流入しているわけではないだろう。
新NISAによる「劇的な変化」を買う
では、新NISAのスタートと日本株の急騰はどう結びつくのか。「投資家は新NISAによる日本の金融・資本市場の『劇的な変化』を買っている」と筆者は考える。
先日、三菱UFJアセットマネジメントが運用する投資信託「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の9日の資金流入額が1000億円を超えたというニュースがあった。23年12月の推計の月間流入額(1088億円)と同程度の資金がたった1日で流入したという。年が明けてまだ数日のうちにこれだけの爆発力を見せつけられては、先々を考えてここで日本株を買わないという選択肢はないはずだ。
米S&P500や全世界株式が個人投資家に人気なのは、過去のパフォーマンスが良かったからだ。ところが最近では日本株のパフォーマンスも引けをとらないことが投資家の間で認知されつつある。今はかなりの円安水準であることから為替のリスクも念頭に置いてリスク・リターンを冷静に考慮すれば、いずれ日本株にも資金が流入すると思われる。日本の個人金融資産の総額2000兆円を考えれば、そのわずかな比率でも日本株に向かえばとてつもない押し上げ効果を発揮するだろう。
そして年初からの急騰の背景として、「抜けたら速い」という相場の性格が指摘できる。日経平均は23年7月初めに高値をつけて以来、その水準を終値では抜けずに半年間もみ合ってきた。そのもみ合いで、たまりにたまったエネルギーが高値を抜けたことにより一気に爆発している。「バブル後高値」「33年ぶり高値」とは言うものの、実質的には「最高値」だ。これより上値で買っている人は(実質的に)いないのだから、戻り待ちは出てこない。つまり、この水準は「真空地帯」なのだ。売りはすべて利益確定売りだから、回転も効きやすい。利益が上がっている分、余裕をもって再投資できるのだ。
こうなると買い遅れた投資家は持たざるリスク、FOMO(Fear of Missing Out、取り残される恐怖)を感じてしまう。上述の通り、利益確定売りをした投資家は再エントリーしやすい。結果として「押し目待ちに押し目なし」の相場となり、「買うから上がる、上がるから買う」という展開が続いている。
日経平均のバブル後高値更新は可能
さてこの相場、どこまでいくのだろう。筆者はまだまだ上値があると見ている。これだけの相場になってもまだ弱気が多いということが、この相場がまだ息が長く続くと期待できる理由だ。
15日のテレビ東京「Newsモーニングサテライト」の投資家サーベイで、「日経平均は史上最高値を2024年中に更新できるか」という質問に対して、回答者の過半数が「できない」と答えていた。その根拠はよくわからないが、多分に心理的なものだろうと推察する。33年前の高値を実際に見たことのある人は少ない。「さすがにもう上がらないだろう。史上最高値を更新するには、3万6000円から3000円近く上昇するということだから無理そうだ」と直感的に考えてしまうのではないか。
しかし、それは「考えている」ことにはならない。日経平均は15日に一時、3万6000円を付けた。それを起点とすれば史上最高値3万8915円まで2915円。率にすると約8%の上昇で届く。ちなみに大発会の終値3万3288円から3万6000円までは8%の上昇である。わずか7営業日で8%上昇した。24年の営業日はあと237日残っている。
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