米ウォール街のレジェンドが考案 ボックス理論の神髄 – 日本経済新聞
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB194H80Z11C23A0000000/
保存日: 2023/11/09 8:13
兼業投資家で著名投資家ブロガーのみきまるさんに、株式投資の必勝テクニックを学ぶ連載。みきまるさんは、株式界のレジェンドたちの投資法を紹介する本を数百冊読破し、独自の手法で数億円の資産を築いたスゴ腕投資家です。彼らの投資法をひもといていくと、現在の日本株運用に通じるノウハウも多いはずです。
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編集部 株式界のレジェンドから投資の必勝テクニックを学ぶ本連載。前々号からモメンタム株投資のレジェンドを紹介しています。モメンタム株投資とは、株価の上昇に勢いのある銘柄を買って上値を追う投資手法。相場の流れに乗るトレンドフォロー(順張り)の投資です。
今回取り上げるのは米ウォール街の伝説の投資家、ニコラス・ダーバス。彼は世界的なダンサーだったそうですね。失敗を繰り返しながらモメンタム株投資で成功。著書『私は株で200万ドル儲けた――ブレイクアウト売買法の元祖「ボックス理論」の生い立ち』はベストセラーになりました。
みきまる 「株で〇億円儲けた」というタイトルの投資本は山のようにありますが、大抵は中身がない。一方、この本は内容が濃く、唯一の例外と言えるほど価値が高い必読本です。
本書は、ダーバスが生み出した「ボックス理論」について書かれています。ボックス理論とは簡単に言うと、「株価が抜け出して、上方のボックス(箱の中に入っているかのように、一定の高値と安値の範囲内を行き来する状態)に行ったら買う」「トレンドがある限りはどこまでも乗る」という非常にシンプルな手法です。1980年代の「タートルズ」のほか、日本ではスゴ腕投資家のDUKE。さん(ハンドルネーム)がダーバスの投資法を応用しています。
億万長者も出現
編集部 タートルズとは何ですか。
みきまる 米国のトレーダーのリチャード・デニスと数学者のウィリアム・エックハートが設立した投資家集団のことです。2人は「スゴ腕のトレーダーは育てることができるかどうか」を議論し、デニスは「できる」、エックハートは「できない」と主張しました。そこで新聞に広告を出し、面接でふるいにかけて23人を選抜。トレードの基本を教え込むことにしました。
当時秘密とされていたその手法は、今ではネタばらしがされていて、「過去20日間の高値を抜けたら株を買う」という単純なトレンドフォローであったことが分かっています。
タートルズの中には投資がうまくいかず破産した人もいましたが、ジェリー・パーカーという人物は非常に成功を収め、2019年に総資産が7億7000万ドル(約1100億円)になりました。
編集部 それはすごい。スゴ腕は育てられるということですか。
みきまる 結果としてはそうですね。パーカーを入れて、23人中4人が億万長者になりましたから。仮に今、その辺にいるトレーダーを23人集めてきても、これほど高い確率で稼ぐことはできないでしょう。
私がここで伝えたいのは、トレンドフォローは欠点もある手法ですが、その人の性格や能力に合っている場合は、大きな力を発揮することができるという点です。
ダーバスも、前号・前々号で取り上げたジェシー・リバモア(モメンタム株投資の始祖で、世紀の相場師)も一時、かなりの額を稼ぎました。実践するかどうかは別にして、あらゆる投資家はモメンタム株投資を学ぶ必要があるでしょう。自分に合っていた場合は、今後の日本株市場で大きく稼ぐことができるかもしれませんよ。
編集部 夢のある話ですね。
みきまる 投資法は単純であればあるほど成功しやすく、複雑であればあるほど失敗しやすいもの。ボックス理論はこれ以上ないほどシンプルなものだったので、成功しやすかったのだと思います。
みきまるのドロボー理論
また、ダーバスには文才がありました。とにかく文章が面白い。例えば「トレンドに沿って上がっていた株が、一転して下がり始めたらどうするか」という質問に、「泥棒のように逃げ出すしかない」とユーモアに満ちた回答をしています。実際、株は上がる時より下がる時の方が3倍くらい速いもの。私も売る時は常に夜逃げ状態です。パッと売って、二度と振り返りません。
私はここから「みきまるのドロボー理論」を作りました。「指標的に高値圏にある持ち株がモメンタムを失って『完全に崩れたな』と感じたら、後ろを振り返らず泥棒のように猛ダッシュで逃げ去る」という理論です(笑)。ダーバスのこの回答は、売りの本質を突いた名言だと思います。
また、ダーバスは著書『金融市場はカジノ――ボックス理論の神髄と相場で勝つ方法』の中で、「取引所はカジノである」という見方を示しています。
編集部 カジノですか。
みきまる 私自身もこれは株式市場の真実を見抜いていると思っています。ダーバスは、株をカジノのチップに見立てた上で、次のように表現しています。
「会社の業績の良し悪しと株価がどう動くかは別の話だ(中略)。株の価値はまさに買ったときに支払った金額であり、自分のチップを換金したときに得ることができる金額に等しい。良い株か悪い株かという点について言えば、そんなものはなかった。上げる株と下げる株があるだけだった(中略)。上げているうちは、私はけっして持ち株を売らない」
ただ、カジノは胴元の取り分があるため、大まかな期待値(還元率)が0.95〜0.99といわれているのに対し、株式市場では頻繁に売り買いをしない場合、年間リターンは6.5〜7%とされています。手数料や税金を差し引いても期待値は1.05程度はあるでしょう。その意味で、株式市場は参加者にとって有利なカジノだと言えると思います。
ちなみにテクニカル分析と、(景気や企業業績などを分析して、相場予想を行う)ファンダメンタルズ分析を併用した「テクノファンダメンタルズ」という造語は、ダーバスが生みの親だといわれているんですよ。
ダーバスが買いそうな株は
編集部 それでは彼が今、日本株市場にいたら何を買いそうでしょうか。
みきまる 直近、年初来高値を取っていて出来高が多い銘柄ですね。そうした銘柄の1つが、化学メーカーのクラレ。2018年に米子会社の工場で発生した火災事故に関する訴訟関連損失の計上が続いていましたが、売上高は堅調に推移しており株高の期待が持てます。世界トップシェアの製品を多く製造しており、成長力があるのが良いですね。
また、パソコン製造などを手掛けるMCJも株価と売り上げが伸びており、候補となりそうです。
[日経マネー2023年12月号の記事を再構成]
日経マネー 2023年12月号 年末相場はこれで万全! 日本株攻略(秘)テク総覧
著者 : 日経マネー
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