ETFで新NISAの選択肢に幅 まずはETFの基本を習得 – 日本経済新聞
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB2662D0W3A021C2000000/
保存日: 2023/11/02 8:18
東京証券取引所(東証)のアローヘッド
東京証券取引所に上場する商品が拡充され、魅力が増しているETF(上場投資信託)。来年から始まる新しい少額投資非課税制度(NISA)の投資対象としても有望だ。今回は公募投信との違いや新NISAでの扱いなど、ETFの基本知識をQ&A形式で解説する。
【連載「技ありETFガイド」の過去記事】
• (1)新NISAで使いたい 魅力的なETFが東証に続々登場
Q 上場投資信託(ETF)って何?
A 個別株と同様に証券取引所で売買される投資信託のこと。一般的な公募投信との主な違いは、上場しているため市場が開いている時間中に提示された価格でリアルタイムの売買が可能であること。販売会社への手数料が不要なため、コストが低いのもメリットだが、近年は公募投信も低コスト化が進行中で、大きなメリットとは言えなくなってきている。
ETFは投信の一種なので投資対象は分散されており、個別株よりリスクは低い。分配金が自動的に再投資されないというデメリットもある。約300本が東証に上場しており、多くの証券会社では海外市場に上場しているETFも取引できる。
Q アクティブETFとは?
A 運用会社が独自の銘柄選定や戦略で運用するETFのこと。2020年に投資家の耳目を集めた米国の「アーク・イノベーションETF(ARKK)」などが代表例。米国では多くのアクティブ運用型ETFが上場しており、個人投資家の資金を集めている。
東証はこれまで日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などの指数に連動するインデックス型ETFの上場のみを認めていたが、この9月からアクティブETFの上場を解禁した。
経験豊富なファンドマネジャーが銘柄を選定し、市場の動向を考慮しながら売買したり、独自のルールで機械的に運用したりすることで、インデックスを上回る運用成績を目指すETFの登場が期待されている。
ただし、米国とは異なり、デリバティブ(金融派生商品)を柔軟に使うアクティブETFの上場を東証は現時点で認めていない。また、組み入れ全銘柄の日次開示が義務付けられているので、運用側からすると運用ノウハウが丸裸になってしまうリスクもある。
東証は「アクティブETF第1弾ということを考慮し、投資家にとって理解しやすい商品とすることを最優先にして一定の制限を設けた」と説明しており、将来は規制の緩和も期待できそうだ。
Q どんなETFがそろっているの?
A 東証上場ETFについては下の表のような商品がそろっている。主流は日本株、全世界株、米国株、国内債券、外国債券といった大きなくくりの主要指数に連動するインデックス型ETFだ。これらを組み合わせることで年金基金のような長期的な分散投資を低コストで実践できる。株や債券の他に不動産投資信託(REIT)や商品価格の指数に連動するETFもある。
大きなくくりではなく、中小型株、新興株、高配当株、銀行などの特定業種の株、新興国株、特定の国の株、特定の残存年数の米国債など、投資対象を絞り込んだETFも上場している。
取引量が少ないものも多いが、EV(電気自動車)、半導体、テック株、ESG(環境・社会・企業統治)といった投資テーマからつくった指数に連動するテーマ型ETFも増えている。
日経平均株価などの指数の値動きの2倍になるように設計されたレバレッジ型ETFや指数と反対の値動きを示すインバース型ETFも東証では存在感が大きい。
Q 新NISAでの取り扱いは?
A 東証に上場しているETFは成長投資枠で買い付けることができるが、一部、買えない商品もある。例えば、レバレッジ型・インバース型は対象外。デリバティブを用いる商品ETFも大半は対象外だ(下の表を参照)。これらのETFは従来の一般NISAでは買えたが、新NISAでは買えなくなる。個別の対応状況は投資信託協会、または東証のウェブサイトで確認できる。
海外ETFも新NISAの成長投資枠で買える見込み。現在、各証券会社が自社の扱う海外ETFについて検証作業を進めている。東証ETFと同様に、デリバティブを用いるETFなどは外れる可能性が高い。
証券会社によって商品ラインアップが異なる上、各社がそれぞれ対応を判断している。加えて対応状況を集約する組織もないため、具体的な取り扱い状況には各証券会社に尋ねる必要がある。
つみたて投資枠はつみたてNISAの対象商品が踏襲される。つみたてNISAの対象ETFは7本。扱っているのは大和証券などごく一部だ。つみたてNISAに対応するには、るいとう(株式累積投資)のように、ETFを定額で買い付ける仕組みが必要。しかし、証券会社にはメリットが薄いため、対応が進んでいないのが実情だ。新NISAのつみたて投資枠も同様の状況になりそうだ。
Q 売れ筋はどんなETF?
A 下の表は、直近の東証ETFの売買代金ランキングと、楽天証券内の米国ETF売買代金ランキングだ。東証のランキングからは傾向を見るため、売買代金シェアが極端に大きいレバレッジ型・インバース型を除外した。
東証では「高配当」「金」「米国債」など、旬のテーマでETFを買っている投資家が多いことが分かる。新顔のアクティブETF「PBR1倍割れ解消推進ETF」も上位にランクインしている。
海外ETFは、半導体関連株の大きな値動きを狙う「Direxion(ディレクション) デイリー 半導体株 ブル 3倍 ETF(SOXL)」が1位。4位には米国の利上げ終了で価格が上昇すれば大きな利益を得られる「Direxion デイリー 20年超米国債 ブル3倍 ETF(TMF)」が入っている。旬のテーマで投機性の強い商品が人気だ。
また「米S&P500種株価指数」、主要ハイテク株で構成する「米ナスダック100指数」、世界の大型株から小型株までを対象に約8000銘柄を組み入れている「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」など、海外の主要株価指数に連動する定番ETFも上位に入っている。
主要な海外株指数に連動するETFは東証にも上場している。東証ETFなら円建てで売買でき、実質的な為替手数料も低い。現地と日本の二重課税も自動的に調整される。東証ETFも有効な選択肢になる。
(本間健司=日経BP経済メディア編成部)
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