米国務長官、サウジ・UAE訪問 親イラン組織抑止へ協力 – 日本経済新聞
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN12E2B0S3A011C2000000/
保存日: 2023/10/13 8:01

12日、ブリンケン米国務長官はイスラエルで「一人のユダヤ人としてここにいる」と語った=ロイター

【ワシントン=中村亮】ブリンケン米国務長官は12日、カタールとサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、エジプトを訪れると明らかにした。親イラン組織によるイスラエルへの追加攻撃を抑止し、パレスチナ人の避難へ人道回廊を設置するため協力を求める。
米国務省は10日、ブリンケン氏がイスラエルとヨルダンを訪れると公表していたが、4カ国を追加した。
ブリンケン氏は12日、訪問先のイスラエルで記者団に「国務長官としてだけでなく、一人のユダヤ人としてここにいる」と強調した。
義理の父がユダヤ系で、ナチスドイツの強制収容所で迫害を受けたと言及。「(イスラム組織)ハマスによるイスラエル人虐殺が苦しい記憶をよみがえらせることを個人的なレベルで理解している」と語り、イスラエルに連帯を示した。
ブリンケン氏はイスラエルの戦線がパレスチナ自治区ガザから他の地域に広がらないよう中東各国に協力を訴える。
サウジの実力者ムハンマド皇太子は11日、イランのライシ大統領と電話協議した。イスラエルの隣国レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラはイランの支援を受けているとされ、イスラエルへ散発的に砲撃している。
米アクシオスによると、UAEはシリアのアサド政権に対して同国で活動する武装組織にイスラエル攻撃を認めないよう求めた。米国はシリアでもイランの支援を受ける組織が活動しているとみている。
ガザの民間人退避も喫緊の課題だ。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は12日の記者会見で、ガザに住む民間人の退避に向けた人道回廊を設置するためエジプトやイスラエル政府と協議を進めていると明らかにした。
イスラエル軍はガザとの境界に大規模な部隊を集めており、地上侵攻が迫っているとの見方が広がる。イスラエルはガザに電気や水、食料、燃料の供給を止める「完全包囲」を実施し、深刻な人道危機のリスクが高まる。
米国務省は12日、イスラエルへのチャーター便を手配して米国人の国外退避を支援すると発表した。イスラエル軍の地上侵攻が始まればイスラエルの治安も一段と悪化する公算が大きいとみているようだ。
チャーター便の手配は13日に始まり、1週間で数千人の退避を想定する。航空会社がイスラエル便を相次いで停止しており、政府が代わりに国外退避の手段を提供する。
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• 別の視点この記事の通り、中東情勢の動きによりアメリカの中東外交が活発化している。こうしたなか、中東情勢が米中関係の大きな変数になりつつあることも見逃せない。中国はイスラエル、パレスチナ、サウジ、UEAなど中東諸国と等しく親密な関係にあり、イランとサウジアラビアとの仲介外交をも成功させた。これは中国がかねてから中東情勢の変化でアメリカによる中国への圧力を緩和できるとみているからである。中国の見立て通りにいくかどうかはまだ不透明であるが、中国外交が今後どう動くか、米中関係がこれによりどう変化するのか。こちらの動きも注視していく必要があるのではなかろうか。

• ひとこと解説以前に投稿した通り、紛争の行方に関するシナリオは以下の4つ。 (1)ガザと周辺でのハマスとイスラエルの「地域限定戦争」にとどまる (2)戦争区域がやや拡大するが基本的には「地域限定戦争」にとどまる (3)「イスラエルとイランの軍事衝突」に発展するが一時的・限定的 (4)「イスラエルとイランの全面戦争」に発展、世界経済にも悪影響 メインシナリオは(1)。だが、レバノンに展開するシーア派組織「ヒズボラ」の動き次第では(2)があり得る。ブリンケン米国務長官の中東歴訪という外交努力は、「親イラン組織によるイスラエルへの追加攻撃を抑止する」、すなわち上記(2)への拡大を食い止めようとするものである。