NISAで年金以外の収入源 不足分を配当・分配金で補う – 日本経済新聞
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB301AS0Q3A930C2000000/
保存日: 2023/10/05 8:20

写真はイメージ=PIXTA

退職金などのまとまった資金を持っているシニア層は、非課税投資枠が拡大した新NISA(少額投資非課税制度)をどう活用すべきか。本連載では、高齢者の投資の実情に詳しい識者への取材を基に、シニアに適した活用法を具体的に紹介していく。2回目は高配当株や不動産投資信託(REIT)を買ってインカムゲインの確保を狙う方法だ。
まとまった余裕資金が手元にあるなら、成長投資枠をフル活用してインカムゲインが期待できる投資商品を買うのが一案だ。高配当株やREITなら4%程度の配当利回りを期待できる。配当や分配金は再投資せずに生活費に使おう。シニア投資向きの銘柄の選び方や買い方を紹介する。

「使う運用」を考える

「60歳までに資産形成を終えている人なら、新NISAを活用した『使う運用』を考えてはどうか」と提案するのはファイナンシャルプランナー(FP)の深野康彦さん。具体的には成長投資枠で高配当株を買って配当を受け取るという戦略だ。

「例えば利回り4%の株を300万円買うと配当は年12万円。『老後2000万円問題』の収入不足額は月5.5万円なので、2カ月分を賄える。6年間運用すれば資産寿命が1年延びる計算だ。1200万円の成長投資枠をフル活用するとしたら4年延ばせる。余裕があるなら余暇費に使ってもいいだろう」(深野さん)
資産を増やすことはあまり考えなくてもいいが、株価が上昇して配当利回りが低下したら年末に利益を確定し、年明けから別の高配当株に乗り換えてもいい。「無期限」「非課税投資枠の復活」という新NISAならではの使い方だ。
投資対象の高配当株は10年以上の累進的な増配実績のある「日経累進高配当株指数」採用銘柄から選ぶというのが深野さんのアイデア。絶対ではないが減配リスクを避けることができる。
もう一つ気を付けたいのが高値づかみ。これは過去のPER(株価収益率)のレンジを参考に割安なタイミングで仕込むことで回避する。深野さんのアドバイスを参考に選んだ高配当株が下表の7銘柄だ。

※=10年以上連続して累進的な配当(減配せず、増配か配当維持)を続ける銘柄から予想配当利回りが高い30銘柄 注)データは9月1日時点、配当利回りは予想、PBRは実績

REITで「月収」を作る

運用できるまとまった資金があるなら、高配当株ではなくREITで分配金を受け取る投資を考えてみてはどうか。FPの馬養雅子さんはこう提案する。
「長く個別株を手掛けてきたようなシニアは退職金もこれまで通り株で運用しようとするが、それは危険。収入が減るので現役時代と同じリスクは取れないはず。REITは株に比べると値動きはマイルド。足元では4%前後の分配金を期待できる」(馬養さん)
馬養さんが提案するのは、決算月が異なるREITを6本まとめて買う方法。各REITへの投資額を調整することで、毎月、一定額以上の分配金が入ってくるようになる。下表は利回りに着目して馬養さんが選んだREITの6本セットの例だ。
約507万円を投じて各REITを表内の口数だけ成長投資枠を使って購入すると、毎月1万5000円以上の安定収入が入ってくるようになる。
利回りは多少妥協することになるが、安全性を重視して時価総額の大きなREITでセットを作ってもよいだろう。また、複数のREITの6本セットを同時に保有する方法も考えられる。
「資金の投入は非課税で運用できる時間を長く確保するために、短期間でまとめて」というのが馬養さんの意見だ。高齢者施設の入居費用などの資金ニーズが生じるまでは運用を続けても大丈夫だろう。

注)データは9月1日時点

債券ETFで利息を期待

シニアを中心に運用相談を受けているリーファスの西崎努さんは、高格付け先進国債券ETF(上場投資信託)を成長投資枠で買ってみてはどうかと提案する。

西崎さんによるとシニアの運用では「減らさないこと」「頻繁に売買しないこと」が求められるという。足元では円安が進んだことで「通貨分散」を求める声も多い。
そこで実際に提案することも多いのが、米国債や高格付け先進国債券での老後資産運用だ。定期的に利息を受け取れ、満期になれば額面金額で戻るので、多くのシニアが満足しているという。
債券は新NISAでも買えないので、ETFで代替するというのが西崎さんの提案だ。
「ETFは債券とは異なり満期に額面で返ってくる仕組みはないが、ある程度は債券運用と同じ効果が期待できる」(西崎さん)
ドル建ての話になるが、例えば満期までの残存期間が7〜10年程度の米国債を組み入れたETFなら、株やREITよりは値動きは安定している。足元では4%前後の安定した分配金が期待できる。
気になるのは為替の影響だが、西崎さんは「残存期間7〜10年の米国債ETFなら、円高・債券高になっても債券の利息収入程度の利回りは期待できる。長期で運用するなら、円安・債券高のタイミングで利確してもよい」と話す。

注)データは9月1日時点

西崎さんのお勧めは成長投資でNEXT FUNDS 外国債券・FTSE世界国債インデックス(除く日本・為替ヘッジなし)連動型上場投信を買い、つみたて投資枠で全世界株インデックス型投信を積み立てるという戦略。債券ETFはある程度の監視が必要。相場への関心を維持するために、積み立て投資を行うという考えだ。
【連載「シニアの新NISA活用戦略」記事一覧】
• (1)シニアの新NISA活用術 現役と異なり運用は安全第一に
(本間健司)
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