首相NY講演「投資呼ぶ本気度示した」 投資家好感 – 日本経済新聞
作成者:
ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA21BPZ0R20C23A9000000/
保存日: 2023/09/22 7:50
2023年9月22日 5:47
CNBCキャスターとの対談で日本への投資を呼びかける岸田首相㊧(21日、ニューヨーク)
【ニューヨーク=藤田祐樹、大島有美子】岸田文雄首相は21日午後(日本時間22日未明)、訪問先のニューヨークで投資家向けに講演した。日本の資産運用業の強化へ海外勢の参入を促すための「資産運用特区」を設けると表明した。講演後の対談でも投資を呼び込む姿勢を強調し、参加者からは「首相の本気度を感じた」との声が上がった。
首相はニューヨークの経済界の指導者層が集まる「ニューヨーク経済クラブ」主催の会合で講演した。政府が掲げる「資産運用立国」の実現に向けた施策を説明した。「30年間、日本で見られなかった前向きな攻めの姿勢が起きている」と聴衆に訴えた。
• 【関連記事】岸田首相「資産運用特区を創設」 海外勢の参入促す
投資を呼び込むための施策として、国際金融センターとしての機能強化に加えて、アジア最大のスタートアップハブの形成、高度なスキルを持つ外国人が取得しやすい在留資格制度の整備などを挙げた。
資産運用業について「取り組みが遅れていると指摘されてきた構造改革を断行する」と強調した。新たに創設を表明した「資産運用特区」がその柱となる。「英語のみで行政対応が完結できるよう規制改革する」と訴えた。
会場にはS&Pグローバルのダグラス・ピーターソン最高経営責任者(CEO)ら金融業界の経営者のほか、大手資産運用会社のファンドマネジャー、投資ファンドの経営者など200人超が訪れた。
講演を聞いた資産運用会社の経営者は「首相が資産運用の話題に多くの時間を割いたことに驚いた」と話した。あるファンドマネジャーは首相が言及した高度人材を招く施策に特に注目した。「言語の壁はじめ、日本に人材を送りにくかった環境が変われば、より投資しやすくなる」と述べた。
首相は講演後に米CNBCキャスターのベッキー・クイック氏と対談した。同氏は著名投資家ウォーレン・バフェット氏をはじめ米金融界に幅広い人脈を持つ。投資銀行を経営するケン・リッパー氏は「対談を通じてビジネスや金融に開放的な日本の首相だと言外に示した」とみる。
リッパー氏は「岸田首相は具体的な規制や法律の話には触れなかったが、まず変えるという空気を醸成することが大事だ。講演はその役割を果たした」と評価した。一方で、別の参加者からは「日本企業には現金が積み上がっている。株主に還元する流れが必要だ」との注文がついた。
米ヘッジファンド、インダス・キャピタル・パートナーズのジェームズ・シャノンCEOも講演を聞いた。「日本でファンドマネジメントを軸とした経済圏が形成され、外国人投資家は日本企業の経営陣とより深く関わることができる」と期待する。
首相は22日に帰国した後、週明けに経済対策の具体案の検討に入る。講演では「構造的な賃上げ」と「持続可能性強化のための官民投資」の2つを重点に掲げた。「この秋に、さらなる経済対策をしっかり用意し、この流れを確実なものにしたいと思っている」と述べた。
日本の金融業界は言語の壁や国内特有の慣行が残り、海外投資家が敬遠する一因になってきた。
例えば、投資信託の基準価格を計算する際、資産運用会社と信託銀行がそれぞれ計算して毎日照合する。システム開発の面でも日本の様式に対応したベンダーが限られるため「事実上の参入障壁になっている」との不満があった。
首相は「日本独自のビジネス慣行や参入障壁を是正し、新規参入者への支援プログラムを整備する」と指摘した。