新NISAで「家族で億万長者に」 すご腕投資家座談会 – 日本経済新聞
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB148MN0U3A910C2000000/
保存日: 2023/09/19 8:15

左からDAIBOUCHOU(ハンドルネーム)さん、坂本慎太郎さん、御発注(ハンドルネーム)さん(写真=加藤康)

2024年1月から新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まる。新NISAは生涯投資枠の拡大など、現行のNISAとは設計が大きく変わるため、その活用には深い理解が欠かせない。この連載では新NISAをうまく活用するため投資戦略などを紹介する。初回はすご腕の億万投資家3人に、新NISAの評価やお勧めの投資方法についてじっくり語ってもらった。
――最初に皆さんが手掛けている投資法を教えてください。
DAIBOUCHOUさん(以下、D) 23年間、専業で投資家をしています。バリュー(割安)株投資が主体で、約300銘柄に分散投資しています。
坂本さん(同、坂) 投資歴は25年で、証券会社や生命保険会社で金融商品の運用を12年ほどやって、今は個人で株式投資以外に不動産投資などもやっています。基本は超長期投資でいろんな株に分散して投資しています。
御発注さん(同、御) 投資歴21年で私も割安株投資をしています。業績が伸長して、かつ配当も伸びそうな銘柄を予想して買っています。優待株も優待がもらえる最低株数でたくさん持っています。

新NISAは大盤振る舞い

――では早速ですが、新NISA(少額投資非課税制度)について、どんな評価をしていますか。
D 生涯投資枠が成長投資枠とつみたて投資枠合わせて1800万円もあるのはいいですよね。運用の巧拙で多少格差が広がったとしても、国民に投資で資産形成をしてもらいたいという政府の強い意志を感じます。老後資金のうち、年金でも足りない分はNISAとiDeCo(個人型確定拠出年金)を運用して何とかしてね、と。
坂 私は非課税枠の上限が1800万円と聞いて、良い意味で大盤振る舞いし過ぎだと思いました。後々、政府の方針が変わって、非課税というのをひっくり返さないか心配なぐらいです。
私は老後資金の準備という意味に加えて、将来訪れるかもしれないインフレにも備えてちゃんと運用して資産を増やしてほしい、というメッセージにも思えました。配当と値上がり益を合わせて年間利回り5%とかで30〜40年運用していけば、非課税枠いっぱいに資金を入れられなかったとしても、ある程度の資産形成はできそうです。取りあえずは誰もが活用した方が絶対にいいと思います。
御 私は現行のNISAを使ってこなかったのですが、新NISAの内容を聞いて、今回は使おうと思いました。やはり保有期間が無制限になったことが良い点です。保有銘柄の株価が下がっても、持ち続けて株価が戻るのを待てる。かなり使い勝手のいい制度になったのではないでしょうか。
基本は長期で持ちつつ、良い銘柄があったらその都度銘柄を入れ替えていくという使い方をしようと思います。

若者に大きなメリット

坂 長く運用できる強みがある若者にもちゃんと定着しそうですよね。YouTubeやTikTokなどで活躍している節約系やミニマリストのインフルエンサーを見ると、意外とつみたてNISAだけはやっていますと言う人が結構います。そういった人たちが若者を啓蒙してくれそうです。
D つみたてNISAを使っている若い人は既にかなりいます。新NISAでは成長投資枠も使って1800万円全部、投資信託の積み立てという人も出てきそうです。
御 原則60歳以上にならないと引き出せないiDeCoと異なり、NISAはいざという時には現金化できます。そういった意味でもあまり預貯金がない若者にお勧めと言えそうです。
――皆さん高評価ですね。逆に制度をこうしてほしかったという点はありますか。
御 贈与の特例とかは作ってほしかったです。新NISAは18歳から口座を開設ができますが、親が子どものNISA枠を年間の投資上限枠いっぱいに埋めようとすると贈与税がかかってしまう。どうしようかと迷っています。
D 確かにNISAに使う目的であれば、200万円までは贈与に当たらないとかだと、もっと使い勝手が良くなりますよね。

ただ、新NISAの生涯投資枠は、両親と18歳以上の子どもが2人いると一家で7200万円にもなります。もし自分も運用しながら子どもに毎年、100万円ずつ贈与して、もしくは祖父母から孫に同額ぐらい贈与してNISA口座で運用させていくと、それだけでシャンパンタワーのように資産を移転させていくことができます。今の制度でも長い目で見ると、新NISAを活用するだけで「一族富裕層計画」のようなものが実現できるのではないでしょうか。
――新NISAをきっかけに人気を集める株はあるのでしょうか。
坂 やはり最初は高配当株が買われると思います。実際に現行のNISAが始まった2014年には武田薬品工業が多く買われていました。
みんなランキング大好きですから、配当利回りの高い順に狙われるのではないでしょうか。先回りして今のうちに買っておくと、新NISA開始の1月以降に値上がり益が期待できそうです。

高配当株より増配&成長株

――一方で、皆さんが新NISA向きと考える株は何ですか。
D 私が薦めるなら増配銘柄ですね。基本は長期保有だと思うのですが、配当利回りが高い銘柄も増配しなければ、株価の上昇で利回りが下がり、魅力を失います。業績の拡大に応じて増配してくれる銘柄が良いと思います。
それに加えて安定的な成長が見込める株であれば、値上がり益も狙えます。MonotaROやGMOペイメントゲートウェイのように、業績が伸びていて近い将来も需要がちゃんとありそうな企業を、ちょっと割高でも持っておくのが良いと思います。あとは総合商社やオリックスのように、時代に合わせて事業内容を変えられる銘柄は、長期成長が期待できるので、新NISAに向いていると思います。
御 PBR(株価純資産倍率)が低い銘柄にもチャンスがありそうです。最近かなり買われて株価を上げてきましたが、製造業を中心に割安株はまだまだあります。
PBR1倍割れの是正にいまだに取り組んでいない会社も、そろそろ動き出してくれると思っています。PBRも配当も低い銘柄は今後の株主還元策次第で値上がりに期待できそうです。
坂 個人的には、海運株のような業績の良い時にちゃんと配当を出す方針の市況関連株を、安値圏で買うことを薦めたいですね。結局長期保有して配当をたくさんもらうのが一番良い戦略だと思います。あとは少ない購入金額でも買える低位株。株価が上がる時の変動率が大きいので、売却時に非課税枠の恩恵を享受できると思います。
御 逆に私は優待株は新NISAに向かないと思っています。優待株は優待が目当てなので、株価が下がってもなかなか売る決心がつかないからです。それでは新NISAのより良い銘柄に乗り換えられるという魅力が半減してしまいます。インカムゲインだけではなく、キャピタルゲインも狙える銘柄こそ新NISAに向いていると思います。

「保険を解約してまでは……」

――新NISAをきっかけに企業側に変化は起きそうでしょうか。
坂 よく株式分割が増えるとかいわれますが、意外とそれはないと思います。分割して買いやすくしていくと、株主の数が増えて事務コストが跳ね上がるからです。
D ただ、NISA向きの銘柄だと暗にアピールする企業は増えそうですよね。何年連続で増配していますとか。個人投資家向け広報(IR)資料に直接「NISA向き」とは書けなくても、株主還元策などで長期保有向きですとアピールする企業は増えると思います。
――新NISAで初めて投資を始める人もいると思いますが、アドバイスはありますか。
坂 NISAが資産運用の全てではないということは言いたいです。自動車の任意保険を解約してまで積み立てに資金を回す人がいると最近聞いて驚きました。資産形成をしなきゃとあおられ過ぎるのも考えものだなと思います。
御 人気という理由だけで株を買うことだけはやめてほしいですね。例えば配当利回りだけを見て人気の銘柄を買うと、減配を発表した時に一気に株価が下がることも多い。銘柄を選ぶ時には、好業績が続くか、今後も継続的に配当してくれそうかということを意識して買ってほしいと思います。
(田中創太)
[日経マネー2023年11月号の記事を再構成]
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