資産1億円超のスゴ腕も駆使 勢いに乗るモメンタム投資 – 日本経済新聞
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB155320V10C23A5000000/
保存日: 2023/05/19 8:26

年初来高値や上場来高値を次々と更新するほど、価格の上昇に勢いがある銘柄を買って上値を追う順張りのモメンタム投資。海外の著名投資家や国内の億万投資家たちが実践する投資法だ。そのノウハウを株式投資のプロやスゴ腕の個人投資家に解説してもらう。初回は、2人の億万投資家の実践例を紹介する。
ひたひたと上昇を続けている日本株相場。日経平均株価は2021年9月以来、1年8カ月ぶりに3万円台の大台回復も果たした。だが、この騰勢が今後も続くとは限らない。米国では景気後退懸念と金融不安がくすぶり、株式市場も変動幅の大きい展開が続いている。
この先に下落相場や波乱相場に転じても、個別に探せば価格が勢いよく上昇している絶好調の銘柄を見つけることはできる。例えばカーコーティングを手がけるKeePer技研。今年3月から5月にかけて、上場来高値の更新を続けている。今後の展開を読みにくい中、株価が上昇過程にある絶好調株への投資が有効な投資手段になる可能性が高い。

こうしたスタイルは「モメンタム投資」と呼ばれ、古くから実践されてきた。まずは株価が動意づいている銘柄を探し、なぜ上昇しているのか理由を探る。それに納得できれば、株価はさらに上昇すると想定して投資するというやり方だ。モメンタム投資は、『オニールの成長株発掘法』を著した米国の著名投資家、ウィリアム・オニール氏や、米国の伝説的な投資家であるジェシー・リバモア氏など、多くのスター投資家が手掛けてきたことでも知られている。

株価上昇の根拠を探る

株式投資で1億円を超える資産を築いた日本の億万投資家の中にも、モメンタム投資を取り入れている人は少なくない。中にはバリュー(割安)株投資を基本としながらも、一部の売買でモメンタム投資を手掛ける人もいる。その代表が兼業投資家のみきまるさん(ハンドルネーム)だ。
みきまるさんは株主優待制度がある割安な株に投資して、株価の水準訂正を待つ優待バリュー株投資家である。モメンタム投資も手掛けるようになったきっかけは、中古品ネット販売のシュッピンへの投資だ。もくろみ通り株価は上昇したものの、その過程で「割安度が薄くなった」と売却。上昇幅を十分に取ることができなかった。この苦い経験からみきまるさんは、前出のウィリアム・オニール氏がモメンタム投資の要諦をまとめた「CAN-SLIM(キャンスリム)投資法」に注目して、そのエッセンスを採用した。

それ以来、「何かしらの材料が出た」「業績の成長が続いている」など、CAN-SLIM投資法の条件に合致して自身の保有株の価格が上昇している場合は、割安度とは関係なく持ち続けるようにしている。
「投資の成績を上げようとするのなら、モメンタム投資は必要な手法の一つ。私のようなバリュー株投資家でも、学ぶべき投資スタイルだ」(みきまるさん)

新高値ブレイク投資法も

みきまるさんのように、一部の売買で活用する人もいれば、モメンタム投資に積極的に取り組んで資産を築いたDUKE。さん(同)のような人もいる。
上場企業の会社員だったDUKE。さんは、「45歳までに3億円」という目標を実現。アーリーリタイアを果たした。このスゴ腕を億万投資家に押し上げた投資手法は、CAN-SLIM投資法をアレンジした「新高値ブレイク投資法」だ。文字通り年初来などの高値を更新した銘柄に投資する。好調な株価の背景には、好業績や経営体制の刷新などの材料があるはずだと考えて詳しくチェック。株価の勢いも続くと見込める銘柄を保有する。
具体的にはネット証券や「株探」などの情報サイトで、その日の高値更新銘柄をチェック。株探であれば、「株価注意報」の「52週高値を更新した銘柄(過去1年間での高値を更新した銘柄)」で調べる。これら銘柄の日足・週足のチャートを確認。いずれも右肩上がりかどうかを確認した上で、株価が大きく動いた時点で、どんなニュースがあったかを確かめる。「業績予想の上方修正があった」「月次の売り上げデータが急回復した」など、株価が動いた要因を確かめ、今後さらに上昇が見込めるという手応えがあれば、銘柄の購入に動く。
銘柄を買うタイミングは、オニール氏が提唱した「カップウィズハンドル」を踏襲する。これは株価チャートの形状が、取っ手付きのカップに似ていることから付いた名称だ。大きな上昇からいったん下落、調整を経て再度上昇へと向かう過程で過去の高値に近づいたところや、過去の高値をブレイクしたところが買いのタイミングになるという。

一方、売却の際は、『金融市場はカジノ─ボックス理論の神髄と相場で勝つ方法』の著者であるニコラス・ダーバス氏のボックス理論でタイミングを見る。上昇過程にあるチャートは、小さな上下動を繰り返すボックスが上に積み上がっていく状態になる。「ボックスから株価が下に抜けた場合に、上昇が終わったと判断して売却する」とDUKE。さんは解説する。

必ず損切りとワンセット

売却時点の株価が買値を下回れば損切りになるが、DUKE。さんもみきまるさんも「モメンタム投資では損切りが必須」と口をそろえる。「チャート形状から判断するテクニカル分析になるため、100%完璧というわけではない。このため損切りは徹底して行う。自分なら買値より10%下落すれば、損切りする」(DUKE。さん)
こうしたモメンタム投資に取り組む場合、どんな分野にある銘柄が対象になりやすいのか。過去の10倍株達成銘柄のデータなどをDUKE。さんが分析したところ、次の2つのポイントが浮かび上がったという。
1つ目は、時価総額はなるべく小さい銘柄が好ましいことだ。時価総額200億円未満が目安になる。2つ目のポイントは、個人投資家でもビジネスモデルが理解しやすい小売業、サービス業、情報通信業の株が狙うことだ。これらの業種の銘柄は市場の期待も集めやすいという。

ここで再びCAN-SLIM投資法の表をご覧いただきたい。最後の「M」は、「相場が下降トレンドではない」ことを指し、モメンタム投資は相場全体が上昇している時に有効だと定義している。米国株をはじめ、相場見通しが混沌としている状況でも活用できるのか。
「確かに下落相場では、損切りが多くなる可能性はある。しかし厳しい環境下でも株価が上昇する銘柄はある。その意味では対象となる銘柄を探しやすくなるとも言える」とDUKE。さんは話す。
(佐藤由紀子)
[日経マネー2023年7月号の記事を再構成]

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