債券の値上がりをETFで狙う 海外社債でも分散投資 – 日本経済新聞
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB1620X0W3A310C2000000/
保存日: 2023/04/03 7:52

写真はイメージ=PIXTA

米国の金利上昇でにわかに注目が集まる債券投資。米連邦準備理事会(FRB)が将来的に利下げに転じれば、債券価格の上昇も期待できる。債券の値動きをピンポイントで狙うなら、ETF(上場投資信託)を活用する手もある。「債券投資入門」の第5回では、実際に債券型ETFを保有して値上がり益を得ているスゴ腕投資家の投資戦略などを詳しく見ていく。
債券型ETFは、そのETFの対象となる多様な債券にまとめて投資した時と同様のパフォーマンスを得られる点が魅力だ。生の債券と違って「償還」がなく、元本割れの可能性がある点には注意が必要。あくまでも債券価格に注目して、その値上がり益を狙う視点が重要になる。
• ・米国債、利回りは3〜4% 流動性の高さも魅力
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「コロナショック時は株価が暴落して焦ったが、債券型ETFの価格が底堅かったため、安心感を得られた」と話すのは、個人投資家の九条さん(ハンドルネーム)。米国の株式や債券のETFなどで資産を築き、セミリタイアを果たしたスゴ腕だ。例えば、米国公債の値動きに連動するバンガード・米国トータル債券市場ETF(BND)。2019年末から20年7月にかけて約7%上昇した。
債券型ETFは流動性が高いものも多く、「債券にも投資してポートフォリオの多様化を図りたい」という際、手軽に投資できる選択肢だ。さらに九条さんは、「米国の金利が今は高水準で、いずれは下がっていくと考えられるため、投資の機会が訪れている」と付け加える。米金利が高水準であるうちに仕込み、いずれ金利が下がり価格が上昇するのを狙う――という戦略も一考だ。

債券型ETFの狙い方

米国株投資に詳しい億万投資家のたぱぞうさん(同)も、米国の債券型ETFへの投資に注目する一人だ。コロナショック以降は世界的に低金利となり、「債券投資の妙味が薄い」と考えていた。しかし今は、「米金利も近年にないほどに高水準となり狙いやすい環境となった」と話す。
「債券投資の初心者であれば、BNDやiシェアーズ・コア米国総合債券市場ETF(AGG)などの幅広い投資適格債に投資する総合債券ETFがいいだろう。米国債全体の価格上昇の恩恵を受けることができる」と助言する。
さらに高い利回りを狙いたいのであれば、海外の社債など、リスクの高い債券に着目する手もある。海外の社債は利回りが高い点が魅力だが、信用リスクが気になるという人は、ETFを活用できる。
九条さんが投資しているのがiシェアーズ iBoxx 米ドル建てハイイールド社債 ETF(HYG)。直近12カ月の分配金から算出した利回りは約5.6%(3月中旬時点)。「ハイイールド債」と呼ばれる格付けが低い分、利回りが高い社債の値動きに連動する。

生の社債では少ない投資額で分散投資することが難しいため、資金量が限られる個人投資家はハイイールド債の購入に躊躇することも多いだろう。しかしETFなら、複数のハイイールド債に分散投資するのと同様の効果が得られる。「1社が債務不履行(デフォルト)に陥っても、影響は限定的。一方で、利回りは大きいので魅力的」と九条さんは指摘する。

九条さんは多様な債券型ETFに投資

2016年頃から債券投資を手掛けている九条さん。コロナショック時にパフォーマンスを支えたバンガード・米国トータル債券市場ETF(BND)は既に売却し、現在はより投資対象が細分化された商品にも注目している。iシェアーズ iBoxx 米ドル建てハイイールド社債 ETF(HYG)は、その一つだ。

総資産ポートフォリオに占める債券の割合は、「少しずつ買い集め、10%ぐらいまでは割合を高めたい。最高で30%ほどになる可能性もある」と話す。最近は償還まで持った場合の利回りが4%超えである点に魅力を感じ、生の米国債にも投資した。

Direxionデイリー20年超米国債ブル3倍ETF(TMF)にも投資する。これは、残存期間が20年超えの米国債で構成された指数の3倍の値動きをするもの。債券は株式と比べて価格上昇の幅が限定的であることがデメリットだが、3倍ブルならより大きな利幅が狙える。「ただし価格下落も3倍の動きをするため、利上げ観測が強まればダメージも大きい」と九条さんは念を押す。

(大松佳代)
[日経マネー2023年5月号の記事を再構成]