文字起こしアプリ「Notta」日本市場に懸ける中国の連続起業家 – 日本経済新聞
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ153JU0V10C23A3000000/
保存日: 2023/03/28 21:47
AI関連のイベントで発言するNottaの張社長
中国のシリアルアントレプレナー(連続起業家)が手がける文字起こしアプリの利用が日本で広がっている。人工知能(AI)を応用したネットサービスだが、10億人超のネット利用者を抱える中国では一切提供せず、日本市場に集中している。中国で続々と生まれる起業家による新たな日本進出の形と言える。
「中国市場は競争相手が多すぎる。民営の中小企業が多い日本の方が顧客を開拓しやすい」。文字起こしサービス「Notta(ノッタ)」を運営するNotta(東京・中央)の張岩社長はこう語る。
Nottaは「Zoom(ズーム)」などのオンライン会議を録音し、リアルタイムで文字起こしするAIサービス。42種類の言語に対応し、日本語では98%の精度を実現できるという。新型コロナウイルス禍に伴う需要増を見越し、2020年に提供を始めた。
米調査会社データエーアイによると、Nottaのスマートフォンアプリの日本のアクティブユーザー数は22年10〜12月、前年同期比で約80%増加。会社側も日本の累積ユーザーが100万人に達したとしており、急速に普及が進む。
Nottaの公式サイト
張氏は大学でコンピューター工学を専攻し、06年の卒業後はネット広告会社などで経験を積んだ。その後、17年ごろに中国で一大ブームとなったシェア自転車大手、摩拝単車(モバイク)の共同創業者になった。
考え方の相違からモバイクの経営を離れた後は、AI分野での創業に挑戦し、Nottaへとたどり着いた。ネットを舞台とした10年代以降の中国の創業熱を体現してきた人物と言えるが、他の経営者との違いは顧客を中国以外、とりわけ日本に求めていることだ。
NottaはZoom、Teams(チームズ)など日本で一般的なオンライン会議では使えるが、中国製システムには一切対応していない。サービス運営に必要なクラウドシステムも中国系ではなく、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)を使っている。
グループの持ち株会社は中国ではなく、英領ケイマン諸島に登記。株主には中国系ベンチャーキャピタル(VC)も名を連ねるが、資金は人民元ではなく、すべてドル建てで調達している。日本の対中警戒を意識し、意図的に経営体制をデカップリング(分断)しているかのようだ。
「世界3位の経済規模を持ち、ソフトの消費水準が高い日本市場は魅力的だ」(張氏)。経済安全保障などを理由に、中国発のネットサービスを画一的に否定してしまっては、日本の産業界の活性化は望み薄だろう。
(アジアテック担当部長 山田周平)
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