2023年全人代の政府活動報告要旨 – 日本経済新聞
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM042MP0U3A300C2000000/
保存日: 2023/03/06 9:36

人民大会堂で行われた全人代の開幕式(5日、北京)=比奈田悠佑撮影

中国の第14期全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の第1回会議で、李克強(リー・クォーチャン)首相が5日に実施した政府活動報告の要旨は次の通り。
【2022年の回顧】第20回党大会が成功裏に開催され、社会主義現代化国家を全面的に建設する壮大な青写真を描いた。新型コロナウイルスの感染被害の抑制、経済成長の維持、安全保障の確保を実行した。感染症対策と経済・社会の発展を両立させ、ウイルスの変異と防疫状況に応じて感染症対策を適時に調整した。国内総生産(GDP)は3%伸びた。
【過去5年の回顧】習近平(シー・ジンピン)同志を核心とする党中央の力強い指導の下、激動する世界情勢、新型コロナの感染拡大、中国経済の成長鈍化など多くの試練に耐え抜いた。貧困脱却堅塁攻略戦に勝利し、予定どおりに小康社会(ややゆとりのある社会)を全面的に完成させ、最初の100年の目標を実現し、第2の100年の奮闘目標に向けて進み始めた。
「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」を導きとして、(習氏の権威を高め党員に忠誠を事実上義務付ける)「二つの確立」の決定的な意義をしっかりと把握し、(習氏の党の核心としての地位と習氏を中心とする党中央の権威を守る)「二つの擁護」を徹底した。
質の高い発展を進め、科学技術イノベーションで多大な成果を収めた。改革開放を推進し、人民の生活水準は不断に高まった。新型コロナ感染症対策では決定的な大勝利を収めた。
【直面する課題】貿易成長の原動力が弱まり、外部からの抑圧がエスカレートしている。国内経済は需要不足が際立つ。民間の投資と企業の先行きが不透明で、多くの中小・零細企業が困難を抱える。雇用対策は非常に困難で、一部の地方政府の財政難が深刻になっている。不動産市場が数多くのリスクを抱え、一部の中小金融機関のリスクが顕在化している。科学技術のイノベーションの能力が伸び悩んでいる。

政府活動報告を読み上げる李克強首相(5日、北京の人民大会堂)=比奈田悠佑撮影

形式主義・官僚主義が依然として目立ち、一部の地方政府に政策実施の硬直化やノルマの上乗せがみられ、一部の幹部は職務を怠り、職権を乱用し、現実を見ていない。大衆の意思を無視し、大衆の合法的な権利や利益を軽んじるなどの問題がある。
【23年の方針】習近平同志を核心とする党中央の力強い指導の下、「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」を導きとし、「中国式現代化」を着実に推進する。質の高い発展の推進に力を入れ、国内と国際という二つの大局、感染症対策と経済・社会発展、発展と安全を統一的に考慮する。
【23年の経済目標】経済成長率目標は5%前後とする。都市部の新規就業者数は1200万人前後とし、都市部調査失業率は5.5%前後とする。消費者物価の上昇幅は3%前後とする。住民所得の伸び率は経済成長率とほぼ同ペースに保つ。
【財政】財政赤字の対GDP比は3%とする。優遇税制を見直し、現行の減税や料金引き下げなどの措置について、延長すべきものは延長し、調整すべきものは調整する。
【技術開発】戦略的な新興産業を大きく育成し、産業チェーンの脆弱な部分を重点的に補強する。科学技術政策は「自立自強」を焦点とする。新型挙国体制を整え、重要な核心技術を巡る難関を乗り越えるうえで政府主導を徹底し、技術革新における企業の主体的地位を際立たせる。
【雇用】雇用優先政策を各地で徹底し、若者、特に大学新卒者の就職支援により優先的に取り組む。
【新型コロナ】健康維持と重症化予防を指針とし、高齢者や子ども、基礎疾患のある人の感染予防と治療を重点的に行う。ワクチンと薬の開発を進め、医療需要を充足する。
【内需拡大】消費の回復・拡大を優先させる。耐久財消費を安定させ、個人向けサービス消費の回復を促す。今年の地方政府特別債は3兆8000億元とする。
【産業】製造業の重要産業チェーンに関して、国を挙げて重要な核心技術を巡る難関を乗り越える。先端技術の研究開発と応用・促進を加速する。デジタル経済を大いに促進し、監理体制を整備し、プラットフォームエコノミーの発展を後押しする。

政府活動報告の最中、飲み物を飲む李克強首相(5日、北京の人民大会堂)=比奈田悠佑撮影

【企業改革】国有企業現代コーポレートガバナンスを整備する。民間経済と民間企業の成長を奨励・サポートし、中小・零細企業と自営業者の発展を後押しする。
【外資誘致・活用】市場参入規制を緩和し、現代サービス業を一層開放する。環太平洋経済連携協定(TPP)などへの加入交渉を推進し、制度型開放を拡大する。外資企業をしっかりサポートし、指定重要外資プロジェクトの着地を促す。開かれた中国大市場は、必ずや各国企業に中国でのさらなる成長機会をもたらすだろう。
【金融】監督管理を強め、地域性・系統性金融リスクを回避する。大手不動産企業の経営危機に効果的に対処し、負債比率を改善し、無計画な拡大経営を防ぎ、不動産の安定成長を促す。地方政府の債務リスクを防止・解消し、債務期限構造を改善し、利息負担を低減し、新規発行額を抑え、債務残高を削減する。
【食糧】作付面積を確保し、新たに食糧5000万トン増産計画を実施する。(テクノロジーを活用した農業である)アグリテックと農機導入を強化する。
【環境】クリーンで高効率な石炭利用と関連技術の研究開発を進め、新型エネルギー体系の整備を急ぐ。
【民生】住宅保障体系の整備を強化し、マイホームの購入や買い替えを支援し、市民や若年層が抱える住宅難を解消する。養老サービスを充実させ、出産を支援する政策体系を拡充する。
【軍事】「習近平の強軍思想」を貫徹し、(27年の)中国人民解放軍の創設100年の奮闘目標の達成に向け、闘争・戦備・建設を推進する。訓練・戦備を全面的に強化し、軍事戦略指導を刷新し、実戦化軍事訓練に力を入れ、各方面で軍事闘争を統一的に進める。
【香港・台湾】「一国二制度」などの方針を揺るがず貫徹し、法に基づく香港・マカオの統治を堅持する。新時代の党の台湾問題解決の基本方策を貫徹し、「独立」反対・祖国統一促進を貫き、祖国の平和的統一への道を歩む。
【外交】独立自主の平和外交政策を遂行し、各国との友好協力を発展させる。世界平和の建設者、世界発展の貢献者、国際秩序の擁護者であり続ける。国際社会とともにグローバルの発展とセキュリティーのイニシアチブを実践し、人類運命共同体の構築を推進し、世界の平和と地域の安定を守っていく。
(北京=川上尚志、上海=若杉朋子)