米、半導体補助金の受付開始 中国生産10年禁止が条件(写真=AP) – 日本経済新聞
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN010870R00C23A3000000/
保存日: 2023/03/01 7:50
2023年3月1日 6:54
ワシントンで講演するレモンド米商務長官=2022年12月(AP=共同)
【ワシントン=飛田臨太郎】バイデン米政権は28日、半導体の国内生産を増やすための補助金を巡り、390億ドル(約5.3兆円)分の申請受け付けを開始すると発表した。申請する条件として、10年間、中国への関連投資を禁じる。中国への輸出規制と合わせ、半導体の米中分断が一段と深まる。
半導体補助金は昨年8月に成立した関連法に盛り込まれた。総額は527億ドルに及び、今回は第1弾として製造を対象にする。最先端のロジックやメモリーチップの生産拡大を目指す。研究開発向けの補助金は今秋に始める。
米商務省は28日、申請の条件を指針として示した。中国との取引を大幅に制限するのが柱となる。中国を中心に安全保障上の懸念がある外国企業と共同研究をしたり技術提供をしたりした場合は全額返金を求める。
1.5億ドル以上の資金を受け取る企業は、事前予測を超えた収益がでた場合には政府に一部を返還する。自社株買いや配当金に使用するのも禁じる。女性労働者が働きやすいように保育サービスの整備も求める。
補助金の受給を見こして、既に多くの企業が米国で投資を始めている。半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)はアリゾナ州で高性能の「4ナノ(ナノは10億分の1)品」を生産する。同州の総投資額は400億ドルで、米国では過去最大級の海外投資になる。
米インテルや韓国サムスン電子も生産を拡大する。レモンド商務長官は日本企業にも活用を呼びかける。同氏は「我々の目標は、最先端のチップを生産できる全ての企業が米国内で大規模に生産をおこなう唯一の国にすることだ」と強調する。
巨額補助金は先端半導体の優位性で中国を上回るための戦略の一環だ。商務省によると、中国は過去2年間、ある特定チップの生産能力で世界の80%以上を占めたという。米国は1990年に世界のチップ生産の約4割を占めていたが、現在は1割に落ちた。輸出規制で中国への技術流出を抑え、補助金で米国への技術流入を進める。
米国の動きは補助金合戦を誘発している。欧州連合(EU)は1345億ユーロ(約20兆円)を拠出する計画だ。日本も累計2兆円規模の補助を打ち出し、国内投資を支援する。
もともと中国は25年に自給率を70%まで高める国家目標を掲げ、巨額の補助金を投入してきた経緯がある。米欧日も中国式に追随する形で、世界の半導体生産には保護主義の懸念が強まっている。TSMC創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏は昨年末、アリゾナ州の工場建設を祝う式典で「地政学的な変化があった。自由貿易はほぼ死んだ」と言及した。
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