住宅資金、教育・老後資金を踏まえて決める
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOMH061FW0W3A200C2000000/
保存日: 2023/02/13 7:54

住宅資金について考えることは人生全体の設計にもつながる

固定型の住宅ローン金利が上昇傾向にあるなか、金利が高くなる前に急いで住まいを購入しようと考える方が散見されます。金利動向も重要な視点ですが、住まいの購入にあたってまずは予算をどのように決めていくべきかを考えてみましょう。

「人生の三大資金」とは

突然ですが「人生の三大資金」という言葉をご存じでしょうか。人生で特に大きな金額を必要とする3つの資金のことで、「住宅資金」のほかに「教育資金」「老後資金」があります。一生のうちに稼げる金額がある程度決まっているとすれば、その範囲内で三大資金それぞれのウエートを慎重に考えなければなりません。
つまり、単純な算式で表現するならば、
住宅資金 + 教育資金 + 老後資金 + 生活用の経常支出など ≦ 生涯収入
となるように人生設計をしておく必要があるわけです。「夢のマイホーム」実現のために無理をして住宅資金が膨らみ、結果として教育資金や老後資金が足りなくなるという問題が起こらぬよう、まずはそれぞれどれくらいの金額が必要かを考える必要があります。

教育資金、私大学費で1人400万〜500万円必要

教育資金は子供の人数と、進路が公立か私立かによって必要額が変わってきます。例えば私立大学に通う場合、学費だけで子供1人当たり400万〜500万円程度を確保しておく必要があるといわれます。一定額を毎月積み立てて学費を準備する場合、子どもの誕生直後から月2万〜2万5000円程度の貯金を18年間行う必要がある計算です。私立の中高一貫校に通わせるとしたらもっと資金が必要となりますので、毎月の貯蓄額はさらに高くなります。

老後資金、介護・医療費含め2500万円が目安

総務省の「家計調査年報(家計収支編)」によると、「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦1組のみの無職世帯」の毎月の収支は2015〜21年の平均で約4万円の赤字となっています。仮に赤字額を月5万円、老後生活を30年間とすれば老後資金は合計で1800万円必要という計算になります。介護費や医療費など不測の事態への備えも必要ですから、老後資金は予備費も考慮して2500万円程度を一つの目安とすべきという意見もあります。老後生活が始まるまでにこの金額を確保するため、受け取れる退職金や年金額の概算から不足する金額を算出し、いつからどの程度貯蓄に回して準備すべきかを検討しておく必要があります。

住宅資金は毎月の支出可能額が基準

教育資金と老後資金を確保するために、いつごろからいくらずつためていけばよいかわかったら、毎月の生活費(衣食・レジャー支出など)の大まかな金額も算出します。次に、今から定年までの毎月の手取り収入から、毎月ためる教育資金と老後資金、生活費の概算を差し引きます。こうすれば毎月、返済として支出可能な住宅費が見えてきます。住宅費には住宅取得時の自己資金をためるための積み立てや住宅ローンの支払いだけでなく、固定資産税や修繕費用といった保有コストも含みます。
毎月の返済可能額がわかり、返済期間と金利が決まれば借入可能額が算出できます。この借入可能額に、住宅取得のために積み立てた自己資金を足した合計額が、大まかな住宅資金の金額となります。なお、自己資金には住宅取得にかかる各種経費(登記費用、不動産取得税、引っ越し費用、家具取得費用、中古住宅なら仲介手数料など)も含める必要がある点には注意しましょう。

学び直しで稼ぐ力を身に付ける

実際に計算してみると、教育資金や老後資金が想定していた以上にかかることに気づくでしょう。「退職金で住宅ローンを返済すればよい」という安易な考えはやめたほうがよい、ということも理解できると思います。
お金にまつわる具体的な話を聞かされると、現実を突きつけられるようでつらくなってしまうという方もいらっしゃると思います。ただ、最近は副業を認める企業も増えており、挑戦するために自己投資を計画する方も増えているようです。また、65歳以降も毎月数万円程度を稼げる力があれば老後の収支が大きく変わりますから、中高年になってからの学び直しの計画も同時に立てている方もいらっしゃいます。
住まい購入の予算を考えていくことは、人生全体のデザインを考えることにもつながります。ぜひ、楽しんで計画してみてください。