マイナンバーカードで楽々 医療費控除はこれでOK
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB061H10W3A200C2000000/
保存日: 2023/02/08 8:20
マイナンバーカードを使って利用できる行政手続きのポータルサイト「マイナポータル」
2月16日の確定申告スタートまで1週間余り。焦って医療費の領収書の束と格闘を始めた人もいれば、逆に「年明け早々片付けた」と余裕の人もいるだろう。医療費控除などの還付申告の場合、2〜3月のシーズンに関係なく通年行うことができる。だがちょっと待って。労力最少化の観点からはどちらも不正解。あと数日待ちさえすれば領収書整理の手間を画期的に省いてくれるデータが到来することになっているのだ。届けてくれるのはお国、届く先はマイナンバーの個人向けサイト、マイナポータルだ。制度開始以来丸7年、持つ利点がないと言われ続けたマイナンバーカードに汚名返上の時がやってきた。
医療費控除は家計の味方
万事物価高の折、確定申告は数少ない確実な節約チャンスだ。条件に該当すればお国が責任を持って税金をおまけしてくれる。所得税の場合、自分で指定した口座に1カ月程度で現金が振り込まれるのでちょっとしたお小遣い気分が味わえるし、情報が共有される住民税も6月支払い分から減額される。
なかでも身近なのが1年間に払った医療費が高額になった場合に使える医療費控除。2021年のデータでは医療費控除の適用者は742万人と還付申告件数全体の半数超を占める。対象者は今後も増える傾向だ。公的医療保険のお役立ち制度「高額療養費」(1カ月の医療費負担額が上限を超えると超過分が払い戻される仕組み)のハードルが地味に高くなっている上、昨年10月からは所得の高い75歳以上の医療費の自己負担割合が2割に引き上げられている。
家族合算で「目指せ10万円超え」
医療費控除の計算式は次の通りなので、一般には「10万円ライン」の攻防になる。
医療費控除額=(2022年に払った医療費総額-保険などで補塡される金額)-10万円(※所得の合計額が200万円未満なら所得の5%)
医療費控除額は「その分稼がなかった」ことになり、税金計算上の所得金額から差し引けるので自分の税率分の所得税と住民税(10%)が軽減される。昨年大病やケガで入院をして100万円出費し、うち50万円は民間保険でカバーされた所得税率20%の人の場合、所得税と住民税で12万円分のメリット。アリとナシの差は大きい。今話題の出産費用も対象になる。一人暮らしの大学生の子どもや単身赴任の配偶者の分なども余さず合算の上、一番所得税率の高い人が申告するのがお得だ。
2月9日、マイナポータルにお知らせが届く
節税には欠かせない医療費データだけど集計が面倒……。この悩みが今年の申告から解消される。「今月どこの病院にかかり、いくら支払った」という医療費通知情報は既に21年9月受診分以降、マイナポータルで見られるようになっている。原則、受診月の翌々月の11日に更新される。これに加え、確定申告時の利用を想定し、1年間分のデータが今後は毎年2月9日(原則)に一括取得できるようになる。昨年の確定申告でも一部期間は利用できたが、1〜12月の通年データがマルっと取得できるのは今年が初めてだ。
このデータとマイナンバーカードさえあれば、いつでもどこでもスマートフォンやパソコンを使って医療費控除の還付申告ができる。マイナポータルの利用者登録を終え、国税庁の電子申告・納税システム「e-Tax」と連携できるように下準備を済ませた後の手順は以下の通りだ。
・e-Taxで申告書の作成を開始
・提出方法は「e-Tax(マイナンバーカード方式)」を選ぶ
・マイナポータルに移動、カードを読み込んで本人確認
・マイナポータル連携に「同意する」
・取得できる証明書のなかから「医療費通知情報」を選択
・家族分の取得には「代理人設定」をする
保険診療分以外は忘れずに追記
所要時間は5分程度。領収書の紙の束と格闘した経験からすると隔世の感だ。ただし全ての医療費控除対象がカバーされるわけではない。保険診療ではないが医療費控除の対象になる費用は事後的に手動で追記する必要がある。体外受精などの不妊治療や歯のインプラント、レーシックの手術代のほか、市販の医薬品や通院のための交通費なども忘れずに加算しよう。その分については5年間、領収書(除く交通費)を保存しておく必要がある。
「健康保険証化」はマストではない!?
「なるほど便利だな、マイナ保険証」と感動した後、実際はマイナンバーカードと健康保険証をひも付けて「マイナ保険証化」しなくていいと知り驚いた。確定申告に便利な1年分の医療費データは「マイナポータルの利用登録をした全ての人が利用可能」(国税庁)だという。7500円分のマイナポイントというニンジンをぶら下げての健康保険証化との整合性は?と思わないでもないが、便利になる話だけに目くじらを立てるのはやめよう。医療費データの利活用はしたいが、拙速にマイナカードと一体化し従来型保険証を廃止する国の方針に反発する人は、ひも付けせずに確定申告を済ませばいい。とはいえマイナポータルにログインするとすぐさま「健康保険証化はこちら」のバナーが目に飛び込んでくる。このプロセスでチェックを入れさえすれば7500円分のマイナポイントが得られる。釈然としないがどちらも自分の選択だ。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
• ひとこと解説マイナンバーカード/マイナポータルについては、2023年に入ってから嬉しいサービスの提供が相次いでいます。2023年2月6日には、引っ越しの際にオンラインで転出届を提出できるサービスが全ての自治体で始まりました。転出元の自治体に出向かずに手続きを済ませることができます。 マイナンバーカード交付枚数は1月末時点で7500万枚。前年比で約5割増と急速に普及しています。2月16日から始まる確定申告でも、マイナンバーカードでe-Taxにログインする人が例年になく増えそうです。カードへの期待が高まる中、トラブルなくスムーズな使い勝手を実現できるか。デジタル政府は1つの正念場を迎えています。