毎月分配型ファンド、元本取り崩しの分配金が目立つ
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB236II0T20C23A1000000/
保存日: 2023/01/27 8:09
投資信託の分配金のうち、投資元本を取り崩して支払われる「元本払戻金(特別分配金)」が目立って増えている。毎月分配型ファンド約1100本を対象に調べると、1年前に購入した場合、全体の3割弱で分配金の全額が元本払戻金だった(2022年12月末時点)。
予想分配金提示型でも全額元本払戻金
投資信託を購入した個人が受け取る分配金には大きく2種類ある。運用益を原資とする「普通分配金」と、「元本払戻金(特別分配金)」と呼び投資元本を取り崩して支払う分配金だ。普通分配金は課税対象だが、元本払戻金は元本の一部なので非課税の扱いとなる。
「分配金は運用益の還元のはず」と思っていたとしても、実際は普通分配金と元本払戻金の組み合わせとなることが少なくなく、全額が元本払戻金で「単に元本が戻ってきただけ」という場合もある。
残高の大きい主な毎月分配型ファンドについて、元本払戻金の状況を調べて表にしてみた(表A)。それぞれ1年前、3年前、5年前に購入したとして、これまでに受け取った分配金のうち元本払戻金の割合がどの程度だったかを示す(22年12月末時点)。
表の15本でも1年前に購入した場合、4割の6本で分配金の全額が元本払戻金だった。加えて、1年前、3年前、5年前に購入したいずれの場合も、分配金の全額が普通分配金として支払われたファンドは15本の中で1本もない。
残高最大の「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」を1年前に購入した場合の分配金もすべて元本払戻金だった。
グラフBは同ファンドの基準価格と分配金の推移を示している。1年前に購入した場合は、基準価格がその後1年間に大きく下落した中で支払われた分配金の1100円すべてが元本払戻金だったことになる。一方、同ファンドを3年前、5年前に購入した時の元本払戻金の割合は10%前後と比較的低い。
このように、同じファンドでもいつ購入したかにより、分配金が元本払戻金となるかどうか、どのくらい元本払戻金になるかは変わってくる。
同ファンドは、ここ数年関心を集めてきた「予想分配金提示型」ファンドの代表格で、分配方針として決算日前日の基準価格の水準に応じた分配金額をあらかじめ定めている。基準価格が高くなるほど分配金が増えるが、基準価格が下がると分配金を支払わないこともある。
ただ、たとえ予想分配金提示型であっても、元本取り崩しの分配金と無関係ということはない。
ETFと単位型、元本取り崩しと無縁
国内設定の株式投資信託の中で分配金がすべて普通分配金として支払われ、元本の取り崩しに全く関係しないのは、上場投信(ETF)と運用開始後に購入できない単位型投信だけだ。
ETFの分配原資は組み入れ銘柄の配当収入や利息収入に限定され、運用経費控除後のインカムゲインを全額分配する。単位型投信は利息配当収入(経費控除後)、基準価格の元本超過額のどちらか多いほうを上限として分配金を支払う。
これに対し追加型株式投信では、毎月分配型ファンドに限らず、隔月分配型や3カ月決算型、年2回決算型、年1回決算型においても仕組み上、購入時期とその後の基準価格の動きや分配金額次第で、元本の取り崩しによる分配金の支払いを避けられない。分配回数は少ないものの高額の分配金を特色とするファンドでは、もらった分配金の大部分が元本払戻金だったという事態もありえる。
目論見書に「収益分配金」との記載があったとしても、運用益だけを原資にして分配金が支払われるとは限らないことをよく認識しておきたい。
(QUICK資産運用研究所 高瀬浩)