FRB、利上げ0.5%に減速 23年末見通し5.1%に引き上げ(写真=ロイター)
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1403F0U2A211C2000000/
保存日: 2022/12/15 7:39

2022年12月15日 4:03

FRBは利上げペースを減速しつつ、2023年末の政策金利見通しを引き上げた=ロイター

【この記事のポイント】
・利上げ幅は4連続で続いた0.75%から小さく
・23年末の政策金利見通しは中央値が4.6%から5.1%に
・23年5月会合を最後に利上げ停止のシナリオ有力に
【ワシントン=高見浩輔】米連邦準備理事会(FRB)は14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%の利上げを決めた。利上げ幅は4連続で続いた0.75%から小さくなった。減速は今回の利上げ局面で初めて。参加者による2023年末の政策金利見通しは中央値が9月時点の4.6%から5.1%に引き上げられた。
短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は4.25~4.5%となった。これまでの利上げの累積的な効果を見極めるため急ピッチな利上げを転換したが、9月時点の見通しよりインフレは高止まりしており、利上げの到達点は高くなった。市場はすでに大勢が今回の利上げ幅を織り込んでおり、23年末見通しがどれだけ上方修正されるかが焦点だった。
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今回示された見通しに沿えば、次回会合から利上げ幅を通常の0.25%に戻した場合、到達点まで3回分になる。23年に入って3回目の5月会合を最後に利上げを停止するシナリオが有力となる。利上げの到達点はリーマン危機前の最高水準である5.0~5.25%に並ぶ。
記者会見したパウエル議長は10月と11月の消費者物価上昇率が鈍化したことを歓迎しつつ「インフレが持続的に低下していることを確信するには、さらに多くの証拠が必要だ」と指摘。政策金利の到達点の予想を「再び引き上げることがないとは自信を持って言えない」と強調した。
政策金利が高水準にあるため、仮に23年前半に利上げを止めても政策金利を維持するだけで米経済には強い金融引き締め効果が続く。FOMC参加者は個人消費支出(PCE)物価指数の前年比が足元の6%から低下するものの、23年末も3.1%と目標の2%を上回ると予想。FRBのパウエル議長はこれまで23年中に利下げに転換しない考えを強調している。24年末にかけては4.1%に政策金利を引き下げる想定だ。
経済成長の急減速は避けられない。FOMC参加者による23年10~12月の実質経済成長率(前年同期比)の見通しは中央値が9月時点の1.2%から0.5%へと大幅に下方修正された。経済の地力を示す潜在成長率を大幅に下回る水準だ。マイナス成長を予想する参加者も9月時点の1人から2人に増えた。
パウエル氏は会見で「景気後退になるかどうか、そうなった場合、それが深刻なものになるかどうかも分からない」と説明した。ただ今回の予測の中央値はまだ失業者の急増を伴うような景気後退を想定していない。9月に経済見通しを公表した際は、足元で3.7%と歴史的な低位にある失業率が23年末には4.4%に上昇するとしていた。今回はこれを4.6%と小幅に引き上げただけにとどめた。
新型コロナウイルス禍からの回復局面で、米経済は企業の求人が急増した一方、高齢層の働き手が戻らず、人手不足が常態化している。経済の軟着陸(ソフトランディング)シナリオを懐疑的にみる専門家は多いが、FRBは景気が減速しても失業率の急上昇につながらない可能性が高いとみている。
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• ひとこと解説今回の利上げ幅も来年末までの利上げ幅も私の予想と同じだった。インフレ率は低下傾向にあるが、賃金上昇率が高く企業利益もまだ良好なので求人数が多いことからみても、2%に向けて着実に下がっていくか不透明だからだ。消費も食品などの実質消費は停滞しているが、耐久財やサービスの需要が強くサービスを中心に雇用の伸びは堅調だ。住宅市場は販売が年初から低迷しているが、住宅購入から賃貸を選択している人が増えているとみられ、その結果、家賃の伸び率は上昇を続けインフレの押上に寄与している。やはり来年2月3月頃にあと0.75%程度引き上げて上限を5.25%程度にして来年末までは維持するというのが現時点では適切な判断だ。

• ひとこと解説市場が十分予想していた利上げ「ペースダウン」である。パウエル議長は記者会見で、現在の政策金利水準は「まだ十分に景気抑制的ではない」と述べ、利上げを続ける意向を強調した。市場金利低下や株高で金融環境が早い段階で緩んでしまうと引き締め効果が不十分となる恐れがある。このため「インフレ率が持続的に下向くと確信できる」まで、タカ派姿勢をFRB当局者は前面に出し続けるだろう。パウエル議長は「ピーク金利はデータが悪ければ引き上げられるが、インフレ指標が軟化すれば引き下げられる」と、記者会見で認めていた。インフレ率鈍化が順調に進めば、利上げの天井はFRBの現時点の想定(5.1%)よりも切り下がることになる。