FRB議長、利上げ減速「12月にも」 到達点は引き上げ示唆
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN30DYM0Q2A131C2000000/
保存日: 2022/12/01 10:10

2022年12月1日 3:30

米ブルッキングス研究所で講演するFRBのパウエル議長

【ワシントン=高見浩輔】米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は30日、米ワシントンのブルッキングス研究所で講演した。利上げを減速する時期について「早ければ12月の会合になる」と表明。高インフレがピークを越えたかどうかの判断には慎重な考えを改めて示したが、今後も高い物価上昇が続いた場合は利上げの回数を増やして対応する考えを改めて強調した。
FRBは11月1~2日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で4会合連続となる0.75%の利上げを決定。12月13~14日に予定されている次回会合で利上げ幅を0.5%に圧縮するかどうかが焦点となっている。
パウエル氏は金融政策の効果が実体経済や物価に時間差で影響を及ぼすとして「これまでの急速な金融引き締めの効果が完全に表れるのはこれからだ」と指摘。「政策金利がインフレを引き下げるのに十分な引き締め水準に近づくにつれ、利上げペースを緩やかにすることは理にかなっている」と説明した。
11月会合では大多数の参加者が「近いうちに利上げペースを減速することが適切になる可能性が高い」と主張していたことが明らかになっているが、パウエル氏は12月会合での実施をやや強く示唆した。
パウエル氏は「インフレ率が実際に低下していることを確信するには、さらに多くの証拠が必要だ」と強調した。「過去1年間、政策の引き締めと成長の鈍化にもかかわらず、インフレ率の鈍化に明確な進展はみられない」とも述べた。
FOMC参加者は9月の時点で23年末の政策金利見通し(中央値)を4.6%としているが、パウエル議長は最終的な利上げの到達点について「いくらか高くする必要がありそうだ」と話した。
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• ひとこと解説市場と対話し、サプライズを起こさない。パウエル議長の講演がその流れを踏まえるものだとすれば、コンセンサス通り12月から利上げ幅を50bpに下げてくる公算は大きい。ただし、喫緊出て来る雇用統計がとても強いものになれば、75bpの金利上昇幅を維持する可能性もゼロでない。どちらにしろ、鍵は景気統計がどの程度弱まって来るか、物価高の圧力は本当にピークアウトしたのか、を見極めること。日本の物価高も春にはピークアウトし、それが見えれば利上げに踏み切れないまま、低金利が維持される。欧米の景気スローダウンを背景に金利差が縮小して、金融市場は再びのゴルディロックスに入る可能性が大きくなっている。

2022年12月1日 9:20 (2022年12月1日 9:58更新)

• ひとこと解説11月のFOMC声明文は金融引き締めの累積効果とラグ(時間差)を強調。その後出てきたFOMC参加者発言の多くは、12月の利上げ幅縮小を示唆するものだった。今回のパウエル議長の講演内容に違和感は全くない。むろんFRBとしては、株価なども含めた全体的な金融環境の緩みが進み過ぎてしまい、経済に及ぶ引き締め効果が時期尚早に弱まることは望んでいない。このため、今回のパウエル講演を含めて、株高や長期金利低下をけん制する狙いのトークが混じることが十分起こり得る。そうした中で焦点になるのは、議長も講演で整理して説明していた、消費者物価の行方。前年同月比プラス幅が順調に縮小してくれば、利上げ終了観測が強まる。