FRB、0.75%利上げ 減速示唆も到達水準は「より高く」
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN02DZM0S2A101C2000000/
保存日: 2022/11/03 7:38

2022年11月3日 3:02

2日、FOMC後に記者会見するFRBのパウエル議長(ワシントン)

【この記事のポイント】
・通常の3倍の利上げ幅で、6月に約27年ぶりに実施してからは4会合連続
・パウエル議長は利上げペース減速を示唆、12月会合で議論
・同時に利上げ終了時に到達する金利水準は「より高く」と表明
【ワシントン=高見浩輔】米連邦準備理事会(FRB)は2日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75%の利上げを決めた。通常の3倍の利上げ幅で、6月に約27年ぶりに実施してからは4会合連続となる。記者会見したパウエル議長は利上げペースの減速を示唆しつつ、利上げ終了時に到達する金利水準はより高くなるとの見通しを示した。
利上げ幅は市場予想通りで、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は3.75~4.0%となった。2008年1月以来、約14年半ぶりの水準だ。FOMC参加者が9月に示した政策金利の見通しは年末の中央値が4.4%だった。12月に利上げ幅を0.5%に縮める予想になっている。
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2日に公表した声明文では「金利目標の継続的な引き上げが適切」と前回までの表現を踏襲しつつ、今後の利上げペースの決定には「金融政策が経済活動や物価に影響を及ぼすのに時間差がある点を考慮する」と新たに加えた。急ピッチの利上げが時間をおいて深刻な景気後退を招く「引き締めすぎ(オーバーキル)」のリスクを意識した表現とみられる。
パウエル議長は記者会見で次回以降の会合で減速について議論することを認めつつ、金融引き締めをどの時期まで続けるかという問題の方がより重要になっているという見方を示した。その上で23年中に4.6%とした9月会合での金利見通しについて「最近のデータを踏まえれば、最終的な金利はより高くなる」との見解を示した。利上げの停止についての議論は「かなり時期尚早だ」とも指摘した。
インフレの加速に対応して急ピッチな利上げを進めてきた段階から、今後はこれまでの利上げ効果を含めつつ、より慎重に雇用や物価の動向を見極めて金融引き締めの到達点を探る局面に移行する。「強いドルはいくつかの国で試練となっている」とも言及し、波及効果について注視していることも付け加えた。
FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数は9月に前年同月比6.2%上昇し、高い水準のまま伸びが前月から横ばいになった。賃金上昇に伴う幅広いサービス価格の上昇を受けており、エネルギーと食品を除くコア指数でみると伸びが加速した。高インフレのピーク越えは見通せていない。パウエル氏は「道半ば」と表現した。
背景にあるのは足元の米経済の底堅さだ。減少傾向にあった企業の非農業部門の求人数は9月に再び増加に転じ、4日に予定されている10月の雇用統計も失業率が3.5%と記録的な低水準のまま横ばいになると予想されている。
FRBのパウエル議長はこれまで米経済の強さを強調し、金融引き締めが中途半端になって高インフレが長期化した1970年代の経験を踏まえてインフレ抑制を「やり遂げる」と強調してきた。
ただ金融引き締めの影響は半年から2年ほどかけて実体経済を減速させる。このため専門家の多くは足元の急速な利上げが23年以降に景気後退を招くと懸念している。8日の中間選挙を控え、米議会からも急ピッチの利上げを懸念する声が相次いでいる。
パウエル氏は2日の会見で、景気後退に陥らずにインフレを抑える経済のソフトランディング(軟着陸)について「(道は)狭くなっているが、可能だ」と明言したが、同時に先行きの見通しが不透明である点も強調した。