バーナンキ氏「金融安定は困難伴う」 ノーベル受賞受け
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN103VL0Q2A011C2000000/
保存日: 2022/10/11 7:43
米連邦準備理事会(FRB)元議長のバーナンキ氏は、急激な利上げを進める現状の難しさにも言及した(10日、米ワシントン)
【ワシントン=高見浩輔】米連邦準備理事会(FRB)元議長のバーナンキ氏は10日、ノーベル経済学賞の決定を受けて記者会見を開いた。金融システムの動向がマクロ経済に影響を与えるという研究成果を説明しつつ、実際に金融政策が金融システムをどれほど揺らすかなど未解明な点があるため「バランスをとるのは非常に困難だ」と言及した。高インフレに直面する現状の難しさを示唆した。
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米ワシントンのブルッキングス研究所に用意された記者会見場に妻のアンナさんとともに訪れて謝辞を述べた。夫婦で携帯電話の電源を切っていたため、受賞はシカゴにいる娘から固定電話で知らされたという。
バーナンキ氏は1983年に発表した論文で金融システムが失業率など景気循環に影響を及ぼす仕組みを分析した。ある教授からは金融システムそのものが個別に経済を動かすことはないと指摘されるなど「当時は常識ではなかった」と回顧した。
2008年のリーマン危機では論文で指摘した通りの金融システム不安にFRB議長として直面。「できることはすべてやろうと強く決心していた」と大規模な金融緩和に踏み切った当時を振り返った。
FRBのパウエル議長が急速な利上げを進める現状については、危機後に大手銀行の自己資本比率が規制により高められた点を「良いニュース」と指摘した。一方で米国の融資の半分が(投資会社など)シャドーバンクによるものだとして「ノンバンクにも目を向けるべきだ」と強調した。
「新興国は非常に強いドル高と大量の資本流出に直面している」として米国外に金融不安の可能性があるとも注意喚起した。利上げが金融システムにどう影響を及ぼすかは詳細に判明していないとしつつ「金融環境の悪化は問題に拍車をかけ、激化させる。細心の注意を払わないといけない」と警鐘を鳴らした。
大学を卒業したばかりの人へのアドバイスを聞かれると「私の人生の教訓は『何がおこるか分からない』ということ」と説明した。「計画を立てすぎずに、さまざまな人と関わりを持って、幅広い経験や技術を獲得すること」が大事だと話した。