冷え込む米住宅市場 6月中古販売、2年ぶり低水準に(写真=AP)
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN20DI80Q2A720C2000000/
保存日: 2022/07/21 8:10

米中古住宅は供給不足が続き、価格は高止まりしている(ペンシルベニア州)=AP

【ニューヨーク=斉藤雄太】米住宅市場の減速感が強まってきた。6月の中古住宅販売は5カ月連続で前月を下回り、2年ぶりの低水準になった。金利の急上昇や物件価格の高騰で需要が冷え込んでいる。住宅ローンの申請件数は22年ぶりの低水準に沈む。住宅投資の急な落ち込みは米国の景気後退リスクを高めかねない。
全米不動産協会(NAR)が20日発表した6月の中古住宅販売戸数(季節調整済み、年率換算)は512万戸と前月から5.4%減った。1月(649万戸)を直近ピークに減少が続き、新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動が停滞していた2020年6月(484万戸)以来の少なさだった。地域別では西部(11.1%減)や南部(6.2%減)の落ち込みが目立った。

「住宅ローン金利と住宅価格の両方が短期間で急激に上がりすぎた」。NARのチーフエコノミスト、ローレンス・ユン氏は販売低迷の背景をこう分析する。米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)によると、30年固定の住宅ローン金利(週平均)は14日時点で5.51%と昨年末より2.4%高くなった。インフレ退治を急ぐ米連邦準備理事会(FRB)の強力な金融引き締め方針が住宅ローン金利の急上昇につながった。
NARの集計する中古住宅の販売価格(中央値)は6月に41万6000ドル(約5700万円)と前年同月比で13.4%上昇し、過去最高を更新した。伸び率は5月(15%)からやや鈍ったものの、なお高い。一般的に需要が冷え込めば価格にも下落圧力がかかる。だが、現在は人手不足などの供給制約で市場に出回る物件が少ない状況が続き、売り手優位で価格が押し上げられるため、購入を諦める人も多い。
住宅市場の減速を示す指標は増えている。米抵当銀行協会(MBA)が20日発表した住宅ローンの週次調査によると、15日までの週の申請規模を示す総合指数(季節調整済み)は前の週から6.3%低下し、22年ぶりの低水準になった。金利上昇で借り換え需要が大幅に落ち込んだほか、新規の住宅購入意欲の減退も映している。

米商務省が19日発表した6月の住宅着工件数は155万9000戸(季節調整済み、年率換算)と前月の改定値から2%減り、2カ月連続の減少になった。バークレイズのプージャ・スリラム氏は「販売減を追うように着工も減り始めている」とみる。
建設や販売など住宅業界の景況感を表す全米住宅建設業協会(NAHB)の住宅市場指数は、7月に55と前月比で12ポイント下がった。低下は7カ月連続。下げ幅は新型コロナの感染拡大初期の20年4月(42ポイント)以来の大きさで、水準も同年5月(37)以来の低さになった。

指数の内訳をみると、「現在の販売状況」「今後半年間の販売見通し」「客足」の3項目とも急落している。NAHBのジェリー・コンター会長は「13%の建設業者は過去1カ月間で販売促進やキャンセル回避のため住宅価格を引き下げた」と指摘する。
「住宅に関しては既に景気後退の領域に入っている」。米証券ジェフリーズのアネタ・マルコウスカ氏はこう指摘し、22年4~6月期の米国内総生産(GDP)は住宅投資の落ち込みが足を引っ張ると予測する。住宅投資は家具や家電などの個人消費との連動性も高く、米景気の先行き懸念は深まっている。