Apple、欧州巨大IT規制に反発 アプリの市場開放に懸念(写真=ロイター)
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN260CE0W2A320C2000000/
保存日: 2022/03/26 23:36

2022年3月26日 11:15

アップルのクックCEOはアプリ配信市場の開放義務化に反対してきた=ロイター

【シリコンバレー=白石武志】欧州連合(EU)が24日に合意した「デジタル市場法案(DMA)」は、米巨大IT(情報技術)企業が寡占してきたスマートフォン上のアプリ配信や決済などについて市場の外部開放を義務付けている。アップルが法案に反発する一方、グーグルは受け入れ姿勢を示すなど、規制対象企業の反応は分かれた。
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「いくつかの条項は我々のユーザーのプライバシーやセキュリティーにとって不必要な脆弱性を生み出す」。アップルは25日までに出した声明のなかでDMAが及ぼす負の影響を強調した。「その他の条項は我々が多大な投資をしている知的財産に課金することを禁じるものだ」とも述べ、技術革新へのインセンティブが損なわれることへの懸念を示した。
アップルはセキュリティーなどを理由にスマートフォン「iPhone」上で外部企業による非正規アプリストアの開設をかたくなに認めていない。正規ストアで配信する有料アプリには自社の決済システムの利用を義務付け、原則として売上高の15~30%の手数料を徴収している。
DMAが施行されれば、アップルはiPhone上で非正規ストアの開設に加え、正規ストア上でも自社以外の決済システムの容認を迫られる見通し。年間200億ドル(約2兆4000億円)超とされる手数料収入の減少は避けられない。

グーグルは「規制当局と協力」

一方、スマホ向け基本ソフト(OS)分野でアップルと競合するグーグルは24日付の声明で「最終文書を検討し、規制当局と協力して実施にあたる」と述べ、法案に従う意向を示した。法案策定プロセスを通じて「政策立案者と関わることができたことに感謝する」とも述べ、アップルとは対照的な姿勢を示した。
もっとも、欧州事業の見直しやシステム改修などの対応を迫るDMAにグーグルがもろ手を挙げて賛成しているわけではない。施行後はスマホに特定のアプリを事前にインストールすることなども禁じられる可能性がある。同社は「いくつかの規則が技術革新と欧州の人々が利用できる選択肢を減らす可能性がある」との懸念も示した。
DMAの規制対象はネット通販や対話アプリ、検索エンジンなどにも及ぶ。アマゾン・ドット・コムのような通販サイトは出品者がプラットフォームを介さず顧客と直接連絡を取り合うことを禁止できなくなるほか、メタ(旧フェイスブック)などが手掛ける対話アプリは基本機能を他社のアプリと相互開放しなければならなくなると見込まれている。

罰金は最大で年間売上高の2割

DMAの規則に従わなかった場合、違反企業には世界の年間売上高の最大10%の罰金が科される。違反を繰り返せば比率は20%に高まる。アップルの2021年9月期通期決算で試算すると、20%の罰金額は約730億ドル(約8兆7600億円)に相当し、この期の最終利益の8割近くを失うことになる。
巨大IT企業に対しあらかじめ禁止事項を列挙するDMAの事前規制の考え方は、問題行為を調査した上で是正や制裁金を命じる従来の独禁当局の事後規制とは異なる。EUが規制をどのように運用するかはまだ不透明な部分も多い。
アップルはセキュリティーなどに関する懸念を示した声明のなかで、「これらの脆弱性を軽減することを期待して、欧州全域の利害関係者と協力し続ける」と述べた。法案の施行が見込まれる23年に向け、巻き返しを狙う巨大IT側のロビイング活動が続くことになる。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
• ひとこと解説iPhoneにウィルス対策ソフトを入れることなく、安心して使えるのは、アップルがAppStoreに登録してくるアプリに対して、審査をしている点が大きい。外部のアプリストアを使えるようにすると、iPhone内にあるデータを盗むようなアプリも出てくることが予想され、ユーザーのプライバシーが脅かされかねない。 アプリ決済手数料も24時間、365日、世界でアプリを審査するコストとして使われている。 アプリ市場の開放は慎重に議論を進める必要がある。


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