ロシア産原油禁輸、米が追加制裁即日発効 英は年内停止(写真=ロイター)
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN08EAJ0Y2A300C2000000/
保存日: 2022/03/09 7:31
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2022年3月9日 5:25

バイデン氏は「ロシア経済の大動脈を標的にしている」と強調した=ロイター

【ワシントン=坂口幸裕、ロンドン=中島裕介】バイデン米大統領は8日、ホワイトハウスで記者会見し、ロシア産の原油、天然ガス、石炭と関連製品の輸入を全面的に禁止すると発表した。同日に大統領令に署名し、即日発効した。まず米国単独で禁輸に踏み切り、英国も年末までにロシアからの原油輸入を停止する。

バイデン氏「ロシア経済の大動脈を標的に」

米英が足並みをそろえてロシアの主要な外貨獲得手段であるエネルギー収入を細らせ、ウクライナへの侵攻を続けるロシア経済に打撃を与える。エネルギーをよりロシアに依存する他の欧州の同盟国などについては各国に判断を委ねる。
バイデン氏は8日の記者会見で「米国はロシア経済の大動脈を標的にしている。ロシアの石油、ガス、エネルギーの輸入を全面的に禁止する」と述べた。「世界中の同盟国、特に欧州と緊密に協議して決めた。欧州の同盟国・有志国の多くが参加しないと理解したうえで禁輸する」と強調した。
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米ホワイトハウスによると、8日からロシア産の石油、天然ガス、石炭や関連製品の新規購入ができなくなり、すでに契約した分は同日から45日間以内であれば輸入できる猶予期間を設ける。米国人がロシアでエネルギー生産にかかわる外国企業に投資することも禁じる。
バイデン氏は「米国は他の国ができないステップを踏むが、欧州と協力してロシアへのエネルギー依存を減らす長期的な戦略もつくっている」と明言。「米国内でもコストが生じるだろう。共和党も民主党もこれをやらなければならないと明確にしている」と話した。

欧州で対応に差、ドイツ「ロシア産、当面必要」

米欧はウクライナに侵攻したロシアへの制裁について、燃料価格などの高騰につながりかねないとの懸念から、エネルギー産業を対象から外していた。歴史的なインフレに悩むバイデン政権も慎重な姿勢だったが、ロシアがウクライナ侵攻で攻勢を強める現状を踏まえて追加制裁が必要と判断したとみられる。

米国がロシア産原油・石油製品の禁輸に踏み込めるのは、輸入量が少ないという事情がある。米エネルギー情報局(EIA)によると、米国が2021年に輸入した原油・石油製品に占めるロシア産の割合は7%台で、同年12月単月では4%台まで減らした。一方、欧州連合(EU)は原油輸入量の3割弱をロシアに頼る。
石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によると、ロシア産原油輸出全体に占める米国向け比率は2020年時点で2.3%にとどまる一方、欧州向けは約5割を占める。
英政府は8日、ロシアからの原油の輸入を段階的に減らし、年末までに停止すると発表した。天然ガスの輸入依存度の引き下げも検討する。英政府によると、英国の原油の総需要のうちロシア産は8%。代替供給先の確保や企業の準備期間を設ける。政府は「1年の時間があれば輸入停止は可能だ」と説明する。
欧州内でも対応に差が出そうだ。ドイツのショルツ首相は7日、ロシアからのエネルギー輸入が当面必要だとする声明を公表した。声明では「欧州が意識的にロシアからのエネルギー調達を制裁の例外にした」と指摘。欧州のエネルギー供給について「現時点ではほかの方法で確保することができない」と記した。