FRB、早期利上げ・資産縮小に前向き FOMC議事要旨(写真=AP)
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN05D0W0V00C22A1000000/
保存日: 2022/01/06 7:40
2022年1月6日 5:44
パウエル議長率いるFRBはインフレ長期化を警戒=AP
【ニューヨーク=斉藤雄太】米連邦準備理事会(FRB)は5日、2021年12月14~15日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公開した。雇用の回復で利上げの判断時期が近づいていることを示唆したほか、国債などの大量購入で膨らんだFRBの保有資産を早期に縮小することに前向きな意見が目立った。インフレの高止まりを警戒し、金融引き締めを急ぎたいとの意向がにじんだ。
21年12月のFOMCでは国債などを大量に購入する量的緩和の縮小(テーパリング)を急ぐことを決めた。従来計画より3カ月早い22年3月に資産購入を終え、インフレ対応の利上げに迅速に動ける余地を広げた。FOMC参加者の中心シナリオとして、22年中に3回利上げする見通しも示した。
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FOMC参加者はすでにインフレが過熱気味とみており、利上げ開始の条件として「最大雇用」の達成時期を注視する。12月会合では多くの参加者が「現在の改善ペースが続けば、労働市場は急速に最大雇用に近づく」と指摘。数人の参加者は「労働市場の状況はすでに最大雇用とほぼ一致している」との見解を示した。ほとんどの参加者がゼロ金利政策を解除する条件を「比較的すぐに達成できる」と判断している。
一部の参加者は、インフレの一段の高進時など必要な場合には最大雇用を達成したと判断する前に利上げに動く選択肢にも言及した。足元の経済環境を踏まえ、参加者は全般的に「従来の想定より早い時期に、また速いペースで利上げすることが正当化されるかもしれない」との判断に傾いている。
すでに12月の会合後、FRBのウォラー理事は「資産購入の終了後まもなく政策金利の引き上げが正当化されるだろう」と述べ、早ければ22年3月半ばの会合で利上げに動く可能性を示している。米金利先物市場では3月利上げの予想が7割近くに達する。
21年12月会合では金融政策の正常化の進め方についても議論に時間を割いた。ほぼすべての参加者が「最初に利上げした後のある時点で、バランスシートの縮小を始めるのが適切である可能性が高い」との考えに同意した。
リーマン危機後の正常化局面では、15年末の利上げ開始後に資産圧縮を始めるまで2年近くかかった。今回は高インフレや保有資産の急拡大などを理由に「利上げからより近い時期に保有資産を縮小するのが適切」と参加者たちは判断している。
FRBの保有資産は足元で8.7兆ドル(約1000兆円)以上に膨らんでいる。FRBが国債を保有しているだけで長期金利には一定の低下圧力がかかり、緩和的な金融環境が保たれることになる。会合では多くの参加者が「保有資産縮小の適切なペースは前回の正常化時より速くなるだろう」と大幅な資産圧縮が進む可能性を示した。一部の参加者は国債より住宅ローン担保証券(MBS)の削減を先に進める選択肢に言及した。
金融引き締めに前向きな「タカ派」姿勢をみせたFRBだが、読みにくいのが新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の影響だ。12月会合の時点ではFOMC参加者の多くがオミクロン型の生む不確実性を認めつつ、「米経済回復の道筋を根本的に変えるとはみていない」といった声も出ていた。その後、全米のコロナ感染者数は21年末から22年初にかけて急増し、景気の下振れリスクも高まりつつある。
バイデン米大統領に再任指名を受けたパウエルFRB議長は11日、米上院の承認に向けた公聴会に臨む。1月25~26日開催の次のFOMCを前に、オミクロン型の流行や金融政策運営への影響についてどのような見解を示すかが注目される。