FRB議長、供給制約解消「時期極めて不透明」 会見要旨(写真=AP)
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0351I0T01C21A1000000/
保存日: 2021/11/04 7:49

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は3日、米連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に記者会見を開いた。量的緩和の縮小(テーパリング)を決めたことについて「経済が条件を満たした」と述べた。高インフレをもたらしている供給制約が解消する時期は「極めて見通しづらい」との見方を示した。主な発言は以下の通り。
きょう、我々は政策金利をゼロ近傍に据え置いた。我々の目標に向けた米経済の進展に基づき、資産購入の減額を始めると決めた。金融政策は、経済回復を力強く支え続けるだろう。パンデミック(世界的大流行)のもたらす前例のない混乱と経済再開を考慮し、我々は引き続きリスクを注意深く見ており、経済回復のためにあらゆる範囲の行動を取る用意がある。
経済は2021年前半、ワクチン接種の拡大、経済再開と強力な政策により(年率で)6.5%増のペースで成長した。7~9月期は急速な成長からは鈍化した。旅行や娯楽など、パンデミックの影響を大きく受けた分野の回復を、夏のデルタ型の感染拡大が妨げた。自動車産業を中心に、供給制約で活動が抑制されている。
その結果、個人消費と企業の設備投資の伸びは7~9月期に横ばいとなった。だが財政・金融政策や、家計や企業の健全な財務状況が支えとなり、21年の総需要はとても堅調に推移している。コロナの感染減少に伴って10~12月期の経済成長は上向き、通年では力強い成長が見込めるだろう。
雇用情勢は改善し続け、求人需要は強いままだ。全体の経済活動と同様に、改善ペースはコロナ感染増に伴って鈍化した。8~9月の月間雇用者数の増加数は平均28万人で、6~7月の100万人より減った。特に減速は娯楽やホテル産業、教育などパンデミックの影響を受けやすい分野に目だった。
労働参加率の低迷は、高齢化と退職増を反映している。働き盛りの世代の参加率もコロナ前と比べて低いのは、子供の世話やウイルスへの懸念によるものでもある。結果として雇用主は求職数を満たすことに窮している。労働市場の供給制約は経済の進展に伴う雇用増とともに、感染抑制で消えるだろう。
供給と需要の不均衡は、複数の分野で相当な物価上昇をもたらした。特に供給制約、供給網の寸断は、需要回復に生産が追いつく速さを左右する。その結果、全体の物価上昇率は長期目標である2%を大きく上回っている。供給制約は想定より大きく長引いている。高インフレの主因はパンデミックによる供給や需要のずれ、一様でない経済回復、そしてウイルスの影響だ。
我々は高インフレが家計に、とりわけ食料や交通など生活に必要な出費増に耐えるのが難しい世帯にとって困難だと理解している。我々のツールは供給制約を和らげることはできない。我々は経済の動きが不均衡を和らげ、物価上昇率も2%目標に近づくと確信している。
もっとも長引く供給制約が物価上昇率に及ぼす影響を予測するのは難しい。グローバルな供給網は複雑で、通常の状態には戻るだろうが、その時期は極めて見通しづらい。もし物価上昇の道筋や、長期的な期待物価上昇率が実際に、長期にわたって我々の目標を超えるような兆候があれば、金融政策の構えを調整する用意がある。
資産購入は重要な施策であり続けた。パンデミック初期に金融安定性と市場機能を保つよう支えた。経済を支えるための緩和的な金融環境を作った。20年12月のFOMCで、最大雇用と物価安定の目標に向けてさらなる著しい進展がみられるまで、毎月1200億ドルのペースで資産購入を継続する意向を表明した。本日の会合で、経済がこの条件を満たしたと判断し、資産購入の減額を始めることを決めた。
11月から、購入月額を米国債100億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)50億ドルの計150億ドルずつ減らしていく。経済が予想通り大きく進展するのであれば、毎月同じペースの減額が適切だとみている。22年の半ばにテーパリングを終えることを意味する。だが経済の見通しが変われば、このペースを修正する。我々がバランスシートの拡大を終えても、長期債の保有を増やしたことは緩和的な金融環境を支え続けるだろう。
本日のテーパリングの決定は金利に関して何の直接的な示唆を与えるものではない。我々は、政策金利を引き上げる前に満たすべき経済状況について、従来とは異なる厳しい評価を明確にしていく。
(米州総局=大島有美子、伴百江、長沼亜紀、野村優子)