台湾TSMC、日本初の工場を正式発表 2024年に量産開始
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM145GH0U1A011C2000000/
保存日: 2021/10/15 1:11

2021年10月14日 18:47

【台北=中村裕】世界最大の半導体受託生産会社(ファウンドリー)である台湾積体電路製造(TSMC)は14日、日本で初となる工場を2022年から建設し、24年末に量産を始めると発表した。半導体不足が長期化するなか、日本政府は経済安全保障上の観点から、有力企業の工場が国内に必要との立場だ。数千億円規模の補助金などを通じて支援する方針だ。
魏哲家・最高経営責任者(CEO)は同日開いた記者会見で、日本工場について「当社の顧客、日本政府の双方から、プロジェクトを支援するという強いコミットメントを頂いた」と話した。
14日夜に記者会見した岸田文雄首相は、TSMCの総額1兆円規模の大型民間投資などへの支援を経済対策に織り込むと表明した。日本政府は31日の衆院選後に編成する21年度の補正予算案に、TSMCへの補助を念頭にした数千億円の予算を盛り込む予定だ。
TSMCは現在、ソニーグループやデンソーと共同で、熊本県に新工場を建設する方向で調整を続けている。
新工場の投資額、具体的な建設地などの詳細は明らかにしなかった。TSMCの広報担当者は日本経済新聞の取材に対し「早ければ年内に詳細を発表できる」と述べた。
TSMCの半導体生産は現在9割以上が台湾だが、米中に続き日本にも進出し、供給体制を拡充する。台湾では来年から、高性能スマートフォンなどに搭載する回路線幅が3ナノ(ナノは10億分の1)メートルの最先端品を、25年には2ナノ品の量産をそれぞれ始める。日本の工場では自動車や産業用途などで現在主流の22~28ナノ品を量産するという。
14日発表した21年7~9月期決算は、売上高が前年同期比16%増の4146億台湾ドル(約1兆6750億円)、純利益は14%増の1562億台湾ドルだった。ともに四半期ベースで過去最高を更新した。新型コロナウイルス禍からの経済活動の再開で、半導体需要が世界で一段と膨らんだ。半導体不足が長期化し、需給逼迫から値上げが進んだことも利益を押し上げた。
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• ひとこと解説岸田首相は本日の記者会見で、「日本の経済安全保障に大きく寄与することが期待される。TSMCの1兆円規模の大型民間投資などへの支援を経済対策に盛り込む」と表明しました。 大規模な資本集約が求められる半導体産業の発展には国家の力も必要です。米国も中国も欧州も巨額の補助金を投じます。 かつて19世紀にドイツを武力で統一したビスマルクは「鉄は国家なり」と演説しました。現代はシリコンが鉄に代わり、「半導体の発展は国家の発展と共にあり」と言えそうです。


• 分析・考察EV化政策とセットで半導体の産業集積を進める必要がある。 プロセスルールが20ナノ以上という数世代前の半導体を量産することから、車載用半導体の供給不足を改善したいという日本政府の意向が色濃い誘致に見える。TSMCにとって日本での生産が理に適ったものとするためには、世界潮流であるEV化政策を日本が加速させられるかが鍵を握る。米政府にとってのアリゾナ州やEU・ドイツにとってのドレスデン周辺では、TSMCやインテル誘致といった半導体の産業集積化とEV・車載電池の能力増強が同時に進んでいる。中国では新車市場が失速しているがEVの販売は急増中。半導体サプライヤーがEV向けに優先供給を始めているのである。

2021年10月14日 19:28 (2021年10月14日 19:36更新)