米NY州・加州が経済全面再開を宣言 ワクチン接種率7割(写真=ロイター)
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN15ERU0V10C21A6000000/
保存日: 2021/06/16 7:55
ユニバーサル・スタジオ・ハリウッド前で開いたイベントに出席したカリフォルニア州のニューサム知事(15日、ロサンゼルス)=ロイター
【シリコンバレー=白石武志、ニューヨーク=河内真帆】米カリフォルニア州とニューヨーク州は15日、経済の全面再開を宣言した。小売店や飲食店などの入場制限はなくなり、多くのビジネスは通常営業に戻った。一方で新型コロナウイルスによる米国内の累計死者数は60万人を超えて増加を続けており、規制緩和が感染力の高い変異型ウイルスのまん延を招くと懸念する声もある。
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「カリフォルニアは再び開かれた。みんなで祝おう」。同州のニューサム知事は15日、入場者数の制限を解除し訪問客で混み合うテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ハリウッド」前から記者会見し、約15カ月ぶりとなる経済再開を宣言した。
同日から州が定めていた小売店や飲食店などにおける収容人数の制限などが撤廃され、社会的距離(ソーシャルディスタンシング)をとる必要もなくなった。新型コロナのワクチンを接種済みであれば医療機関や学校などを除くほとんどの公共スペースでマスクをせずに過ごすこともできるようになった。
ただ、州内の各郡がより厳しい独自の規制を続けることは容認されている。地域ごとにルールが異なる「規制のパッチワーク状態」に伴う混乱を嫌う経済団体からは、各郡の公衆衛生当局に州の基準にそろえるよう求める要望も出ている。
ニューヨークの超高層ビル「ワン・ワールド・トレード・センター」で記者会見するクオモ州知事(15日)=ロイター
ニューヨーク州も15日、州内のワクチン接種が進んだことを理由に新型コロナに関連する規制を同日付で解除したと発表した。記者会見したクオモ知事は「ニューヨークは一時、陽性率が48.16%という世界最悪の場所から(現在の)0.35%と全米で最低になった」と満面の笑みを見せた。
米疾病対策センター(CDC)によると15日までに米国内の18歳以上の64.6%が少なくとも1回のワクチン接種を受けている。カリフォルニアやニューヨークなど10を超える州では成人の接種率が70%を超え、独立記念日の7月4日までに「接種率70%」を掲げるバイデン米政権の目標を前倒しで達成した。
CDCのデータでピークだった1月に7日間移動平均で3500人を超えていた米国内の新型コロナによる死者数は足元では約290人となったものの、なお新規感染は続いている。米ジョンズ・ホプキンス大によると15日時点の米国内の新型コロナによる死者数は累計60万人に達した。ワクチンの接種ペースは鈍化しており、専門家の間では経済再開が感染再拡大を招くと危惧する向きもある。
実際、ワクチン接種が進んでいる英国では新型コロナの変異ウイルスである「インド型」(デルタ株)の流行で新規感染者数が増加に転じている。ニューヨーク州のクオモ知事は15日の記者会見で「教訓を生かし、次にくるべきパンデミックの対応策を練る」と述べた。世界各地の公衆衛生当局はなお、感染力の強い新たな変異型ウイルスの登場に身構えている。
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• 分析・考察州として集団免疫が形成されつつあるなか、経済活動を正常化しようという動きは自然な流れです。世界最大の感染者数を出し、さまざまな制約を強いられたからこそ、国民の側からも、経済再開への欲求と期待の高さはひとしおでしょう。他方、記事でも指摘されている通り、米国内の人の移動が活発化している中、今後の推移が心配です。目下は経済の正常化を進めつつも、公衆衛生措置や接種証明書などを適切に活用しつつ、感染の再拡大を防ぎ、国としてワクチン接種の鈍化を打開する方策を講じていく必要があるでしょう。今後、日本でも自治体によってワクチン接種率の格差が生じれば、同様の問題に直面する可能性があります。
• 別の視点米原油先物は昨日、2018年10月以来となる1バレル72ドル台に上昇しました。米国市場のリポートを見ると「経済活動の正常化に伴う需要増を期待した買いが優勢だった」といいます。 米原油先物相場はこれまで、欧州のブレント先物や中東産ドバイ原油より低い異例の位置にありました。それが15日の比較でドバイ原油を上回る本来の場所に戻ってきました。 先週発表の米ガソリン需要は回復が一服しており、14年以来となる1ガロン3ドル台(全米平均)に乗せているガソリン高値も気がかりです。それでも景気の動きを先取りする商品相場は、米国の経済再開→世界最大規模の米ガソリン需要が回復→原油高という変化を読んでいます。