Appleの取引先、中国最多51社 台湾抜き首位
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC024YH0S1A600C2000000/
保存日:2021/6/2 21:00 (2021/6/3 5:25 更新) [有料会員限定]
アップルのスマートフォン「iPhone12」
米アップルの機器生産で中国企業の存在感が高まっている。アップルが2日までに開示した2020年のサプライヤーリストで、中国(香港を含む)勢は200社中51社と、台湾を初めて上回り首位となった。液晶パネル大手の京東方科技集団(BOE)などが名を連ねた。米中ハイテク摩擦のさなかでもアップルは中国依存度を高めた。
アップルが開示した200社リストは、組み立てや部品・素材供給などアップルの調達額ベースで全体の98%を占める。日本経済新聞が国・地域別内訳を分析したところ、企業の本社所在地でみると、中国は51社と前回18年リストの42社から増えた。
中国勢は主にモジュール(複合部品)の製造や金属加工などスケールメリットを出しやすい分野で存在感を高める。今回新たにリストに入った広東領益智造は、電子機器の充電や振動機能に使うモジュールの生産を担い、深圳証券取引所に上場している。
台湾の調査会社イザヤ・リサーチのチーフアナリスト、エリック・ツェン氏は「アップルが地政学的な緊張や要因によって中国のサプライヤーとの調達や関わりを減らしたという明確な兆候は見られなかった」と指摘。「基本的にコストに基づいてサプライヤーを選択し、資格を与えている」と話した。
日本のサプライヤーの数は34社と前回リストの38社から減少した。イビデン、積水化学工業、SMK、インキ製造のセイコーアドバンス(東京・豊島)、スマホ向け小型レンズのカンタツ(東京・品川)など6社がリストから外れた一方、日本特殊陶業、帝国インキ製造(東京・荒川)が入った。
リストはアップルのすべての取引先企業を網羅しているわけではないため、リストから外れても取引を終了したとはいえない。リストから外れたある会社の担当者は匿名を条件に「アップルにはしっかり供給している。売り上げも増えており、リストに名前がない理由は分からない」と語った。
10年以上にわたって首位を維持してきた台湾は48社と、18年の47社から微増。受託製造の鴻海(ホンハイ)精密工業や和碩聯合科技(ペガトロン)などが依然重要サプライヤーだが、中国企業との競争にも直面している。
アップルが機器の生産を中国からインドやベトナムに移管していることもサプライヤーの構成に変化を与えている。20年のリストではベトナムにあるサプライヤーの数が18年の14社から21社に増えた。うち7社は中国や香港の企業が所有している。
米国を拠点とするサプライヤーは32社と18年の38社から減少した。残ったのは3M、コーニング、マイクロン・テクノロジー、ルメンタム、クアルコムなどほとんどが代替が難しい高付加価値の半導体や材料を供給している企業が中心になっている。
サプライヤーの社数ベースでは13社と少ないが、アップルに供給している部品の価格ベースでは韓国勢が強く、米国勢もなお存在感が大きい。
20年11月、調査会社のフォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ(東京・江東)による「iPhone12」の分解結果を日本経済新聞社が分析したところ、端末全体の原価373ドル(約4万1000円)のうち27.3%を韓国、25.6%を米国が占めた。日本が13.2%で続いた。中国は4.7%にとどまっていた。
アップルのサプライチェーン(供給網)に詳しいある関係者は「中国企業は中国以外のサプライヤーでは考えられないような低い価格を提示することで受注を獲得している」と指摘する。「(品質要求が高い)アップルと仕事することで力を付けられる。アップルとの取引は世界一になるための金色のチケットだ」と話した。
(台北=鄭婷方、黎子荷、東京=渡辺直樹)