マスク氏が揺らすビットコイン SNS投稿、規制に限界(写真=ロイター)
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN221AS0S1A520C2000000/
保存日: 2021/5/25 22:00 (2021/5/26 5:28 更新) [有料会員限定]
マスク氏のツイッターのフォロワーは5500万人超。テスラはマスク氏のつぶやきを重要情報の公表手段としている=ロイター
米電気自動車(EV)メーカー大手テスラの最高経営責任者(CEO)、イーロン・マスク氏の発言が暗号資産(仮想通貨)市場を揺らしている。ツイッターへの投稿が波紋を呼び、ビットコインの価格が乱高下する一因となった。足元では仮想通貨の支持を訴えても価格が下がる場面があった。不規則な発言への信頼が低下し、市場参加者との溝が深まってきた。
マスク氏は5月12日に突如、テスラがビットコインによる購入代金決済を停止するとツイッター上で公表した。ビットコイン価格は投稿後12時間で約7%安となった。
テスラは2月、米証券取引委員会(SEC)への提出資料でビットコインを15億ドル(約1600億円)分購入したと公表し、決済通貨としての受け入れも表明した。マスク氏の投稿がテスラによるビットコイン売却を示唆したと受け取られ、価格は一時急落した。
マスク氏は16日、ツイッター上でこう挑発した。「仮想通貨『専門家』の皆さん、ペイパルを知ってるかい。通貨について君たちが思っている以上に私は理解しているよ」。マスク氏は米決済大手ペイパル・ホールディングス共同創業者の一人でもある。仮想通貨の将来性を訴えても、ビットコイン価格は4月につけた史上最高値の半値まで下げた。
マスク氏はジョークで作られた仮想通貨「ドージコイン」でも発言し、価格の乱高下を招いた。それでも「マスク氏が公の発言前に秘密の売買をしていない限り、憲法で守られる言論の自由の範囲内」(米法律事務所アンダーソン・キルのプレストン・バーン弁護士)との見方が多い。
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米国はツイッターなどSNS(交流サイト)を使った会社の重要情報開示を認めている。テスラは2013年、SECへの提出資料でマスク氏のツイッターを重要情報の公表手段にすると明かした。同氏のフォロワーは現在、5500万人を超え、発言はネット掲示板「レディット」などを通じて瞬く間に広がる。
マスク氏のツイッター発言はトラブルを招いてきた。18年8月にテスラ株の非公開化の計画を表明した際には投稿内容が証券詐欺にあたるとしてSECから訴訟を起こされた。19年には和解に違反したとして、再び訴えられた。2度目の和解で経営に関わる内容はツイート前に弁護士の確認が必要になった。
米法律事務所ケリー・クローネンバーグのティモシー・シールズ弁護士はマスク氏のツイートについて「テスラ社としての情報発信と、個人的な投稿の線引きが難しく、当局が制限するのは困難」とみる。
テスラの広報担当者にツイッターの管理について問い合わせたが、回答を得られなかった。米証券ミラー・タバックのストラテジスト、マシュー・マリー氏は「マスク氏は影響力の大きさを軽視している」と懸念する。
情報サイト「インベスティング・ドット・コム」の調査によると、個人投資家の55%がSNSの情報を投資判断に使っていた。レディットとツイッターを情報収集の場として利用すると答えた比率は共に20%を超えた。
米当局は投資家保護の一環でSNSの監視を強めている。SECのゲーリー・ゲンスラー委員長は6日、米下院公聴会向けの声明で、SNSは「不正者が特定銘柄を宣伝したり、市場を操作したりしようとする可能性がある」と述べた。
仮想通貨への監視網も強まる。米政府は20日、1万ドルを超える仮想通貨の送金について内国歳入庁への報告を義務付けると発表した。中国政府による規制強化の方針も明らかになった。
マスク氏は22日「真の戦いは法定紙幣と仮想通貨の間だ。後者を支持する」とツイートした。ただ、ビットコインの価格は反転しなかった。不規則発言が生んだ相場変動で、長期投資家は仮想通貨市場を敬遠している。マスク氏の影響力に陰りが出てきた。
(ニューヨーク=宮本岳則、シリコンバレー=白石武志)