テスラとビットコイン、負の連鎖に警戒(NY特急便)(写真=ロイター)
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2003J0Q1A520C2000000/
保存日:2021/5/20 7:09 [有料会員限定]
テスラ株とビットコインが似た値動きを続けている=ロイター
19日のニューヨーク市場の最大の話題は暗号資産(仮想通貨)の乱高下だった。ビットコインは一時、前日比30%も下落し、イーサリアムは40%超の急落に。取引障害が相次ぐなど禍根も残した。米国株全体への打撃は限られたが、ビットコインとの関連が深いテスラ株は5%以上下落する場面があった。
米東部時間19日午前9時ごろ、仮想通貨市場に今年最大といって過言ではない激震が走った。ビットコインなどの価格は数時間前から大きく下落していたが、雪崩を打ったように投げ売りが増え、1分で価格が5~10%も動くような極端な相場となった。
米コインベースやバイナンス、日本のビットフライヤーなど主要な交換業者は接続障害が起こり一時的に取引不能となった。1~2時間のうちに障害は復旧していたが、乱高下時に多くの投資家が取引の機会が失った。仮想通貨は全体の時価総額が数日前に2兆ドル(約220兆円)を超えていた巨大市場。その市場が突如機能停止するという構造的なもろさがあらわになった。
「ダイヤモンドハンドを持っている」。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)はビットコインが下げ幅を縮小する中で、ツイッターに投稿した。ダイヤモンドハンドとは一度買った資産をしっかり保有し続けること。SNS(交流サイト)上で、絵文字を使って表現するのが流行語になっている。
マスク氏自身、先週来ビットコインの相場を乱してきた。12日には環境負荷を理由にテスラ車のビットコインでの決済停止を表明。16日にはテスラが持つビットコイン売却の可能性を示唆したとも受け取れるツイートで物議を醸した。のちに売却を否定したがビットコイン価格はこの数日で大きく下落。「ダイヤモンドハンド」には火消しの狙いもあったのだろう。
電気自動車と仮想通貨。本来は直接的なつながりはないが、マスク氏はかねて仮想通貨投資に前のめりな発言を続けてきた。著名債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏は「最近に限ったことではないが、テスラとビットコインの値動きは非常によく似ている」と指摘する。たしかに両者は昨年終盤の高騰局面から平行して動く日が多い。19日もテスラ株はアップルなど主力株よりもビットコインによく連動していた。
昨年躍進した上場投資信託(ETF)の「アーク・イノベーション」も同様だ。組み入れ筆頭銘柄がテスラであるほか、スクエアやコインベースなど仮想通貨と関連の深い企業の株を多く持つ。運用責任者のキャシー・ウッド氏は19日、ビットコインが将来50万ドルになるとの強気予想を保っていると米テレビで説明した。
2020年に急伸した仮想通貨、テスラ、アークといった資産は相互の連関を深めている。どこかに火が付けば連鎖しやすい状況にある。19日は遠隔医療のテラドック・ヘルスなど仮想通貨と直接関係のない株もアークが多く持っていることに引きずられたのか、売りが広がった。
19日はアップル株がほぼ横ばいとなるなど米国株市場全体に動揺は広がらなかった。だが仮想通貨の脆弱性が今後、金融市場全体の需給を乱すリスクは軽視できない。(ニューヨーク=後藤達也)