ステランティスと鴻海、「つながる車」システムで合弁
作成者:
ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR17CMI0X10C21A5000000/
保存日: 2021/05/19 18:46
記者会見ではクライスラーブランドとみられる車種に複数の画面を備えたシステムを披露した(ステランティスと鴻海のオンライン発表会より)
【フランクフルト=深尾幸生】自動車世界大手の欧州ステランティスと台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は18日、車載情報システムを開発・生産する合弁会社を設けると発表した。ステランティスの各ブランドに加え、ほかの自動車メーカーへも車載ディスプレーやソフトウエアを組み合わせた「つながるクルマ」の中核となるシステムの供給を目指す。
合弁会社の名称は「モバイルドライブ」で、拘束力のない基本合意を結んだ。折半出資でオランダに本社を置く。量産開始時期や生産拠点については明らかにしなかった。
「スマートコックピット」と呼ぶ、複数のディスプレーとナビゲーションや音楽などのメディア、クラウドサービスを組み合わせたシステムを開発する。助手席や後部座席では映画やゲームを楽しめたり、自宅の家電を操作したりすることを想定している。
世界各国でプジョーやジープなど14のブランドで自動車を生産するステランティスのノウハウと、スマートフォンなどの受託生産で培った鴻海のインターネット端末のノウハウを組み合わせて、開発を加速する狙いだ。
ステランティスのカルロス・タバレス最高経営責任者(CEO)はオンラインで開いた記者会見で「顧客の満足度を高めるためにソフトウエアが核になる。これこそが鴻海とともに目指していることだ」と述べた。鴻海の経営トップの劉揚偉董事長は「両社の提携はICT(情報通信技術)業界と自動車業界の融合の証明だ」と応じた。
ステランティスは1月に仏グループPSAと欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が経営統合して発足。FCAと鴻海は20年1月に電気自動車(EV)の開発・製造を手掛ける合弁会社を中国に設立する方針を発表していたが、18日の会見ではEVについては触れなかった。ステランティスは独自のEV専用プラットホーム(車台)を開発しており、PSAとの統合を経て提携の内容が変化した可能性はある。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
• ひとこと解説鴻海は大手車メーカーとのEV協業の関係構築で苦戦している印象。 鴻海EVアライアンスのCEOである鄭顕聡氏は、かつてフィアットの中国現法会長や部品メーカーの伊マニエッティ・マレリ(旧カルソニックカンセイと経営統合した現マレリ)の亜大洋州地域トップを務めた。ミラノ発祥の旧マニエッティ社の主要顧客がフィアットで、コックピット周りのヒューマンマシーンインターフェース(HMI)が得意分野。1月にNIOから鴻海に移籍した鄭氏が当案件をもたらしたのだろう。しかしステランティスとしてのEV協業はPSAが拒否したと思われる。鴻海EVには車両量産技術と型式承認の取得ノウハウがある大手車メーカーの協力が不可欠。