グーグルのハイブリッドな働き方
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXKZO71711820Q1A510C2XY0000/
保存日: 2021/05/14 8:19
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米シリコンバレーが知的労働者の労働環境として最先端を走るなか、グーグルはそのリーダーだ。同社はプログラマーをはじめ世界最高峰の人材を効果的に活用していることから、世界中の企業から模範にされている。ワクチンの効果で多くの場所でコロナ禍が収束するなか、グーグルはどのように従業員をオフィスに呼び戻すのだろうか。

人事管理とグローバル人材育成を専門とするコンサルタント。北九州市立大学教授。シリコンバレー流の経営を理解し、学べるようにすることに注力している。著書に「日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法」。
5月5日、グーグルはオフィスワークとリモートワークを組み合わせた「ハイブリッド」ワークプレイスモデルに移行すると表明した。従業員がオフィスに常駐することを優先していた同社にとって大きな変化だ。無料で食事が提供されるなどの福利厚生を充実させることでより魅力的な職場を創り上げ従業員を長時間拘束するという、ある種のスタンダードを生みだした会社だったからである。
最高責任者であるサンダー・ピチャイ氏は同社のブログのなかで「ほとんどの社員が約3日をオフィスで過ごし、2日を自分が最も適している場所で過ごすハイブリッド型の働き方に移行し、オフィスでの時間は”コラボレーション”に集中する」という。
社員は100%自宅で仕事をすることや、年4回他の場所(例えば観光地)で働くこと、他のオフィスに異動することを申請することができる。結果、「社員の約60%が週に数日オフィスに集まり、さらに20%が新しいオフィスで働き、20%が自宅で働く」という比率になると予測している。
これはコロナ禍でアメリカ人の間で広く起こった従業員の意識の変化を表したものだと言える。家で集中して仕事をすることで生産性を向上できることに気づき、時間のかかる通勤時間と引き換えに、家族との時間やオフィス外での活動の時間を増やせることに満足している人が多い。
また、オフィスのデザインも一新した。従来の机の列に代わるものとして、「チームポッド」にはキャスター付きの椅子、机、ホワイトボード、そして収納ユニットなどが設置され、必要に応じて簡単に配置を変えることができる。
「キャンプファイヤー」と名付けられた新しい会議室では、対面式の参加者が円状に着席し、その間にバーチャル参加者用の縦型の大きなディスプレーが配置されており、誰もが会議に参加していることを実感できるようになっている。従来のオフィスではコロナウイルスが蔓延しやすいとの懸念から、シリコンバレーの温暖な気候を利用して屋外にも作業スペースを設けている。
グーグルはすでに2018年に、3つのトレンドに着目したオフィス施設の再検討を開始していた。仕事はオフィスだけでなく、どこでもする。従業員が職場に求めるものは常に変化している。職場環境や会議室は快適性以外の観点も追求する必要がある。
プロジェクトの責任者であるミシェル・カウフマン氏は自分たちは10年先の未来の仕事様式への対応を計画していると思っていたが、「コロナがその未来を今もたらしてくれた」と話す。
[日経産業新聞2021年5月11日付]
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