講談社など3社、書籍流通へ参入 出版生き残りへDX
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2054H0Q1A420C2000000/
保存日:2021/5/13 18:00 (2021/5/14 5:15 更新) [有料会員限定]
講談社などは各書店の客層に合わせた配本を目指す(東京都渋谷区のTSUTAYA渋谷店)
講談社と集英社、小学館は、全国の書店に書籍や雑誌を届ける流通事業を始める。丸紅を加えた4社で年内に共同出資会社を設ける。出版流通は取次会社が担ってきたが約4割は売れずに返品されている。新会社では販売データなどに基づく需要予測で各書店の客層に合った書籍を届け、市場縮小が続く出版業界の生き残りを狙う。
出版流通は日販グループホールディングスとトーハンの取次2社による寡占状態で、出版社が流通を手掛けるのは異例だ。出版大手3社は紙の出版市場で約3割のシェアを握っているとみられる。
新会社は丸紅が過半を出資し、残りを出版3社が分担する。当初の資本金は数億円で、2年後をめどに100億円規模とする予定。他の中小出版社の出版物の流通も請け負う方針だ。
狙うのは書籍流通のデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。売り場面積、過去の販売データ、地域性などをもとに、書店ごとにニーズのある本や数量を人工知能(AI)で予測。実売率を上げて返品に伴う無駄な配送を減らし、出版社や書店が負担している流通コストを2~3割減らす。
配送の実務は運送会社などに委託する見通し。無線自動識別(RFID)タグを活用し、在庫もリアルタイムで管理する。
大手取次は書店の規模に応じて売れ筋を中心とした画一的な出版物を送る「パターン配本」という仕組みを採ってきた。書店側が自ら注文する手間を省ける利点があったが、消費者の需要に合わず返品率は4割弱と高止まりしている。出版社幹部は「医学書などの部数の少ない専門書について店舗の特徴に応じてきめ細かく配送できず、売れ残りにつながりやすい」と指摘する。
一方で取次会社の収益は、人手不足による物流費の高騰で悪化。日販とトーハンはコスト増加分の一部を出版大手に転嫁している。
紙の出版物の20年の推定販売金額は1兆2237億円で16年連続で前年割れ。国内の書店数は1万1024店で20年前と比べて半減している。講談社などは流通改革でこれ以上の市場縮小を食い止める考えだ。
背景には急速に進む書籍のデジタル化もある。講談社の2020年11月期の単独決算では、電子書籍や版権収入が紙の雑誌や書籍販売を初めて上回った。紙の出版市場が縮小するなか、大手出版社の成長はデジタル事業がけん引する。紙の出版物を中心に扱う取次大手の存在感は低下していた。
アマゾンジャパン(東京・目黒)は出版社との直接取引を進めており、KADOKAWAなど多くの出版社が取次を介さずに取引している。取次を中心とした書籍流通の構造は1940年代から続くが、変革の波が押し寄せている。
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