☆NY株ハイライト ハイテク売りが全体に波及 相場揺さぶるインフレ懸念
作成者:
ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZASFL12H11_S1A510C2000000/
保存日:2021/5/12 7:21 [有料会員限定]

【NQNニューヨーク=横内理恵】インフレ懸念を背景に加速していた足元の主力ハイテク売りが相場全体に波及した。11日のダウ工業株30種平均は大幅に続落し、前日比473ドル安の3万4269ドルで終えた。寄り付き直後はハイテク主導で下げたが、次第にリスク回避や持ち高調整の売りが景気敏感株や消費関連株に広がった。セクタローテーションが続き相場が持ち直すのかどうか。先行きを占うのが難しくなってきた。

ナスダック総合株価指数はこの日も2%あまり下げて始まった。きっかけは中国の4月の卸売物価指数(PPI)が市場予想を上回る伸びとなったこと。コロナ禍で落ち込んだ景気や企業業績の回復基調が強まる一方、供給網の混乱などは続き、世界的な物価上昇圧力が高まるとの懸念が広がっている。

12日発表の米消費者物価指数(CPI)も前年同月比で大幅上昇するとみられている。前週末発表の4月の米雇用統計が市場予想を大幅に下回ったことや、株式相場の不安定な動きにもかかわらず、米長期金利はじわじわと上昇している。「4月にいったん落ち着いた米長期金利が再び上昇するとの懸念がPER(株価収益率)の高いハイテク株の売りを招きやすい」(ミラー・タバックのマシュー・マリー氏)と警戒する参加者は多い。

この日はハイテクなどのグロース(成長)株への売りが景気敏感などのバリュー(割安)株にも波及する展開となった。「時価総額の大きいハイテク株安を受けて、リスク回避姿勢を強めた投資家が運用資産全体の見直しや持ち高調整に動いた」(マリー氏)という。

ダウ平均が大幅安で終えた一方、ナスダック指数は0.1%安まで値を戻した。午後には小幅に上昇する場面もあった。ナスダック指数は4月下旬に付けた過去最高値からの下落率が取引時間中に一時7%に達していた。「下げ過ぎていた」(インバーネス・カウンセルのティム・グリスキー氏)との声もあり、売り一巡感も出てきたようだ。ネット通販のアマゾン・ドット・コムなどを筆頭に一部ハイテク株には値ごろ感が出てきたとの指摘もあった。

著名投資家キャシー・ウッド氏が率いるアークインベストメント・マネジメントが「破壊的なイノベーション」を起こす銘柄に集中投資する上場投資信託(ETF)「アーク・イノベーション」も反発した。アーク保有の代表的な銘柄では電気自動車(EV)のテスラこそ下げたが、遠隔医療のテラドック・ヘルスや動画配信のロク、決済サービスのスクエアなどが上げて終えた。前日に5%安に沈んだアーク・イノベーションは5月に入って10日までに14%下げていた。

それでも、景気回復やインフレ加速を背景に米長期金利の緩やかな上昇が続くとの見方から、引き続き市場ではグロースよりはバリュー、ハイテクよりも景気敏感株に投資妙味があるとの見方が優勢だ。ファンドストラットのトマス・リー氏は米CNBCのインタビューで「(バイデン政権が打ち出した)キャピタルゲイン(株式などの譲渡益)増税もありハイテク株への向かい風は強い」と指摘。ナスダック指数のさらなる調整を予想した。

金融緩和を背景にマネーが株式市場に滞留しやすい環境は続く。一方、グロース、バリューともに値上がりしており、割安な銘柄を探すのが難しくなっている。その中で米連邦準備理事会(FRB)の緩和縮小にもつながりかねないインフレ懸念という「不透明要因」が株式相場を揺さぶっている。