半導体不足で車減産、4~6月一段と VWは調達法見直し(写真=ロイター)
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR053380V00C21A5000000/
保存日:2021/5/6 3:05 (2021/5/6 5:11 更新) [有料会員限定]

半導体不足による減産が強い需要に水をさしている=ロイター

【フランクフルト=深尾幸生】自動車生産への半導体不足への影響が拡大している。独自動車工業会は5日、2021年の生産見通しを下方修正。欧州ステランティスは4~6月に生産への影響が最大になると身構える。独フォルクスワーゲン(VW)などは調達方法の見直しを探るが、一筋縄ではいきそうにない。

独自工会は21年のドイツ国内の生産台数について20年比13%増の400万台になると見通しを下方修正した。従来予想は20%増の420万台だった。需要は強いが半導体不足が障害になるとみる。

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欧州ステランティスは5日、4~6月期の計画対比の減産幅が、19万台だった1~3月期の2倍近くになる可能性があるとの見通しを示した。影響が深刻になるとの見通しは米フォード・モーターや独ダイムラーも同様だ。年初の半導体不足では通常通りの稼働で乗り切った独BMWも4月末に英国とドイツの2工場で減産に入った。

自動車用半導体世界最大手の独インフィニオンテクノロジーズは4日、6月までに250万台の自動車が半導体不足で生産されないとの見通しを示した。新型コロナウイルス禍からの急回復による需要増が原因だった年初時点は50万~150万台の生産に影響するとの予測が大勢だった。しかし2月の米国での寒波による半導体工場の大規模停電と3月のルネサスエレクトロニクスの工場火災が重なり、サプライチェーンは混乱を極めている。

自動車用半導体のサプライチェーンは大きく4つの層に分けられる。自動車メーカー、独ボッシュやデンソーなどの自動車部品メーカー、インフィニオンやルネサスなどの半導体メーカー、そして台湾積体電路製造(TSMC)などの受託生産会社(ファウンドリー)だ。部品メーカーが半導体を半導体メーカーから調達し、それを組み付けた部品を自動車メーカーに納める。半導体メーカーは一定部分をファウンドリーに委託している。

VWは重要な半導体については部品メーカー経由ではなく、半導体メーカーから直接購入する方法を検討している。部品メーカーや半導体メーカーと交渉しているもようだ。同社は昨年末からの半導体不足で部品を安定的に供給できなかったボッシュや独コンチネンタルに不満を示していた。電気自動車(EV)や自動運転で半導体の重要性は高まるとみている。

一方、ボッシュは、調達先の半導体メーカーに複数の工場で同一の半導体を生産するよう依頼する。コストは上昇するが安定調達を優先する。複数拠点からの調達は機械部品や樹脂部品では珍しくない。

こうした策がうまくいくかは不透明だ。インフィニオンのラインハルト・プロス社長は4日の記者会見で「ほしいときにほしいだけ注文し、いらなくなったら注文しないという『ジャスト・イン・タイム』方式を見直すときだ」と指摘した。自動車メーカーの在庫を減らしコストを削減する手法だが、プロス氏は半導体に関しては在庫を多く抱えるよう自動車メーカーなどと交渉していることを明らかにした。

半導体が足りないのは自動車向けだけでなく、ファウンドリーの生産能力はスマートフォンやパソコン向けなどとの奪い合いになっている。独コンサルティング会社のローランド・ベルガーによると、TSMCの20年の売上高に占める自動車向けの比率は3%程度とスマートフォン向けの17分の1、コンピューター向けの10分の1と小さい。従来の自動車部品のような強気な交渉は難しい。

天災や火災の影響が正常化しても、慢性的な半導体不足は当面解消されそうにない。ファウンドリーは生産能力を拡大しているものの、本格的に立ち上がるのは23年以降だからだ。自動車メーカーや部品メーカーにとって、半導体サプライチェーンの最適化への模索は続く。