米で半導体不足が深刻化 Appleやフォード、越年も
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN295DO0Z20C21A4000000/
保存日:2021/4/30 5:17 (2021/4/30 7:06 更新) [有料会員限定]
ルネサスの工場火災が米国の自動車生産にも波及する(茨城県ひたちなか市の那珂工場)
【ニューヨーク=中山修志】米国で半導体不足による製造業への影響が深刻化している。米企業の多くは2021年半ばに状況が好転するとみていたが、3月のルネサスエレクトロニクスの工場の火災なども加わり、サプライチェーン(供給網)の正常化は22年までずれ込む可能性が出てきた。影響は自動車からパソコン、建設機械まで多岐に及び、新型コロナウイルス危機からの経済回復の重荷になるおそれがある。
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「4~6月期に30億~40億ドル(約3200億~4300億円)の減収につながる可能性がある」。米アップルのルカ・マエストリ最高財務責任者(CFO)は28日の決算説明会で、半導体不足の影響を説明した。21年1~3月期は「5G」対応のスマートフォンの販売が好調で売上高が前年同期から54%増加したが、4~6月は半導体不足がタブレット携帯やパソコンの販売を圧迫する。
減収の規模は最大でも数%だが、在宅勤務や自宅学習の増加で伸びるはずのノートパソコンやタブレットの需要を取りこぼすことになる。同社は例年も新製品の投入のタイミングで4~6月期の売上高が下がる傾向にあるが、マエストリCFOは「今年は特に落ち込みが顕著になる」と加えた。
フォード・モーターは4~6月の生産台数が当初計画から半減し、減産規模が年間で110万台にのぼる可能性があると明らかにした。2月の時点では半導体不足について「6月をめどに供給が改善し、7月以降に増産を検討する」と説明していた。だが、ルネサスエレクトロニクスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)で3月に発生した火災の影響が加わり、長期化が避けられなくなった。
フォードと直接取引する1次部品メーカー9社が同工場の半導体を調達しており、多数の電子部品の供給が滞るという。フォード幹部は「ルネサスから7月に生産が復旧すると聞いている」と説明したが、電子部品の生産リードタイムや米国までの輸送にかかる時間を考慮すれば、供給不足は夏場以降も続く。
フォードは1~3月に20万台だった減産規模が4~6月に70万台に増加し、7~12月も20万台程度の影響が残ると説明する。合計110万台は20年の同社の世界販売台数の26%に相当する。
建機大手キャタピラーのジム・アンプレビー最高経営責任者(CEO)は29日の決算説明会で「21年後半に生産不足により建設機械や鉱山機械の需要に対応しきれなくなる可能性がある」と述べた。自動車のサプライチェーンに比べて部品や製品在庫に余裕があったものの、中国や南米の需要回復に伴い販売店が保有する製品在庫が手薄になりつつあるという。
各社の生産への影響は事前に確保していた半導体の在庫量やサプライチェーンの広がりによって異なる。半導体メーカーの説明も「年末までに供給が大幅に改善する」(米クアルコム)、「年間を通じて逼迫する」(オランダ・NXPセミコンダクターズ)などばらつきがある。
メーカー各社は工場の操業時間の短縮や週末稼働の取りやめなど細かな生産調整を続けて長期間の操業停止を回避してきた。だが、半導体メーカーの集約が進むなかでグローバルの生産能力は新型コロナ危機前から逼迫しており、需給ギャップを埋めるには時間がかかる。
世界的な半導体不足は完成品メーカーが取引先の集約など供給網の効率化を突き詰めてきた結果でもある。半導体の供給網のもろさが改めて浮き彫りとなり、メーカー各社は調達先の多様化や安全在庫の確保など、有事にも強いサプライチェーンの構築が求められる。