米企業年金、積立不足の解消間近 運用改善(写真=AP)
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN270430X20C21A4000000/
保存日:2021/4/27 6:44 (2021/4/27 17:57 更新)

株価上昇の恩恵は米企業の年金基金にも及んでいる(ニューヨーク証券取引所)=AP

【ニューヨーク=伴百江】米企業年金基金の積み立て不足が大幅に解消している。米調査会社ミリマンが米大手企業100社の確定給付型年金の運用状況を調査したところ、2021年3月末時点の積立比率は平均98.4%と2月末時点の95.1%から上昇し、金融危機前の水準まで回復した。堅調な株式相場と債券利回りの上昇が背景だ。このままのペースが続けば、今年秋までには年金の積み立て不足が完全に解消する可能性がある。

ミリマンは米大手企業100社の確定給付型年金の運用状況を毎月調査している。それによると、100社の年金積み立て不足の金額は3月末で計294億ドルと2月末の912億ドルから大きく縮小した。積み立て不足は金融危機直前の2007年末から現在まで一貫して続いていたが、約12年ぶりに解消間近に迫った。

積み立て不足が減少した背景には運用環境の改善がある。景気回復に伴い株式相場が大幅に上昇したほか、社債などの債券利回り上昇を受けて年金基金が年金債務を計算する際の割引率を引き上げたという。JPモルガンの分析によると、企業年金の多くが株高を受けて利益を確定し、リスク資産を超長期債などの低リスク資産に振り向ける動きが加速したという。

ミリマン社では金融市場がこのままの情勢を維持し、各社の年金の予定利回りが6.2%を維持する場合、今年秋には積み立て不足が解消し、年末までに90億ドルの積み立て超過になると見込んでいる。

一方、民間の企業年金に対して、公的年金基金の積み立て不足は依然として深刻だ。JPモルガンによると、昨年末時点で公的年金の積立比率は平均60%を下回っている。州や地方自治体の財政赤字や財政危機にもかかわらず、年金支払額を削減できないことが積立比率改善の重荷になっている。