NY株ハイライト コロナ再拡大で逆説的株高 「先進国株バブル」に備え
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZASFL22H0N_S1A420C2000000/
保存日:2021/4/22 6:55 [有料会員限定]

【NQNニューヨーク=張間正義】過去最高圏にあり、相場の過熱感を示唆するシグナルが相次ぐ米株式相場だが、大きく崩れる兆しをみせない。世界的な新型コロナウイルスの感染再拡大がむしろ株高基調を一段と強めるとの見方も浮上している。過剰流動性相場の長期化を見込んだ動きが相場を押し上げる。

21日の米株式市場でダウ工業株30種平均は316ドル高の3万4137ドルと反発した。経済活動の正常化期待から工業製品・事務用品のスリーエムや建設機械のキャタピラーなど景気敏感株の上昇が目立った。

ゴールドマン・サックスによると、S&P500種株価指数の構成銘柄の発行済み株式数に占める空売りの比率は平均1.6%と過去最低水準に低下。株安を想定した投資家の空売りの持ち高が相場上昇で買い戻しを迫られ、売りが「枯れている」状態だ。買い戻し一巡後は反動で相場が短期的に下落しやすい。

企業トップなど内部情報に詳しい「インサイダー(内部利害関係者)」の売りも歴史的な高水準だ。米金融専門誌バロンズは今年に入ってからの「インサイダー」の売りが、2006年以来の高水準に膨らんでいると指摘した。経営陣の自社株売りの増加は相場の過熱感を示唆するとされる。また、バンク・オブ・アメリカによると、ダウ平均が過去最高値を付けた12~16日の週に米株式市場から流出した資金は52億ドルと過去5番目の大きさだった。機関投資家とヘッジファンドの売りが膨らんだという。

米コンサルティング会社ミリマンによると、企業側が一定の運用利回りを保証する「確定給付型」年金を採用する米企業年金大手100社の積立比率は3月末時点で98.4%とリーマン・ショック以降の最高だった。株高に加え、長期金利の上昇で年金債務の現在価値を算出する割引率が上昇したためだ。積立比率の改善で企業が積極的な運用をする必要が後退し、「年金の債券買い・株売りというリスク量を落とす『ディリスク』が強まった」(JPモルガン・チェースのニコラス・パニジジョグロー氏)。この見立ては4月以降の米長期金利の低下と整合性がある。

過熱感や一時的な需給悪化は短期的な相場下落を招くが、押しは浅く、すかさず切り返す展開が続く。インドなど新興国での増加で世界の新型コロナの新規感染者数は足元で過去最多だが、感染拡大が逆に世界的な株高を誘発するとの見方が浮上している。

モルガン・スタンレーのマシュー・ホーンバック氏は16日付のリポートで「流動性相場が戻ってくる」と指摘。世界の中央銀行はパンデミック(感染大流行)の状況を注視しており、金融政策を大規模な緩和から正常化に向けた動きを後ずれさせるとの見方を示した。米連邦準備理事会(FRB)についても、「パンデミックの状況次第」としながらも、テーパリング(量的緩和の縮小)の表明を6月から9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)に先送りする可能性を予想した。表明が遅れる分だけ、実際の縮小開始も後ずれするわけだ。

この見立てが当たっていれば、パンデミックの収束時期の後ずれ懸念が高まるほど、世界の中央銀行のバランスシートの拡大が止まる時期の先送りとなる。新型コロナは総供給より総需要の減少に与える影響が大きい。経済全体でのインフレの台頭は限定的となり、中央銀行のハト派と流動性供給の長期化に伴う株高基調は継続する。先進国のなかでも景気回復が最も早く進む米国株市場を中心に「空前の先進国株バブルにつながる」(モルガンのホーンバック氏)のはこれからかもしれない。