チリ、人口26%がワクチン接種完了も感染拡大止まらず(写真=ロイター)
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN15EOR0V10C21A4000000/
保存日:2021/4/16 4:03 [有料会員限定]

ワクチンを接種する市民(3月、サンティアゴ)=ロイター

【サンパウロ=外山尚之】南米チリで新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。全人口の26%がワクチン接種を終えたにもかかわらず、足元の新規感染者数は過去最多のペースを更新する。有効性が低い中国製ワクチンに依存する新興国の苦悩が浮かび上がる。

14日時点でのチリの新規感染者数(7日移動平均)は7321人と、過去最多を更新した。保健省によると、集中治療室(ICU)の使用病床数も過去最多だ。経済活動の再開で人々の動きが活発になったことに加え、感染力が高く、若年層でも重症化しやすいブラジル型や英国型の変異ウイルスの拡大が理由とされる。

チリは世界有数のペースでワクチンを接種していることで知られる。英オクスフォード大学の研究者らが運営するアワー・ワールド・イン・データによると13日時点の人口100人あたりの接種回数は約65回と、英国の60回や米国の57回をも上回り、全人口の26%がワクチンの接種を終えている。しかし、英国などと異なり感染が収束する気配はない。

両者を分ける大きな理由とみられるのが、ワクチンの違いだ。チリで接種されたワクチンの9割以上が中国の製薬会社、科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)製だ。チリでの同ワクチンの有効性は54%と、英米で使われているファイザーやモデルナ製が90%を超えるのに比べ大きく見劣りする。加えてシノバックのワクチンは1回目の接種ではほとんど効果がなく、1回の接種でも強い免疫効果が得られるファイザー製やモデルナ製との差は大きい。

欧米諸国が高性能なワクチンを独占する中、多くの新興国は中国製ワクチンに依存している。ワクチン接種で先行するチリでの感染拡大は他の新興国にとっても他人事ではなく、世界的なコロナ禍収束や経済活動再開の遅れにつながりかねない。

一方、中国製ワクチンは重症化を抑えるという点では一定の効果が見込めるという。チリではワクチンの接種が進んだ3月中旬から、ICUを利用する70歳以上の高齢者数が減少しつつある。ブラジルのブタンタン研究所のコバス所長は「重症化する高齢者の数が減少しているのはワクチンの効果だ」と分析する。