欧州統合を後押し 「ユーロの父」マンデル氏死去(写真=ロイター)
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR06BLV0W1A400C2000000/
保存日:2021/4/6 22:39 [有料会員限定]

経済学者ロバート・マンデル氏(右)=ロイター

1999年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者ロバート・マンデル氏が4日、88歳で死去した。米メディアなどが一斉に報じた。欧州における通貨統合の理論的支柱となり、「ユーロの父」と呼ばれた。欧州統合を強力に後押しし、通貨ユーロを温かい目で見守り続けた国際経済学の権威だった。

ユーロ実現に大きな影響を与えたのは61年の論文「最適通貨圏の理論」だ。共通通貨の成功には労働力の自由な移動などが必要になると提唱。域内における「ヒト・モノ・カネの自由な移動」という欧州統合の理念を後押しする役割を担った。

カナダ生まれで米コロンビア大学などで教えた。欧州出身でないにもかかわらず、共通通貨に関心を抱いたのは、出身地カナダの通貨政策が迷走した経験があるからだ。欧州11カ国がユーロ導入に突き進んだ99年にノーベル経済学賞を受賞。欧州懐疑論が根強い英語圏において、親欧派の論陣を張った。

「ユーロ圏はどんどん拡大する」。そう語り、通貨ユーロは米ドルと並ぶ「スーパー通貨」になる、と太鼓判を押した。南欧への信用不安が深まってもユーロへの信認は揺らがなかった。

革新的な業績が多かった。経済学者マーカス・フレミング氏と「マンデル・フレミング・モデル」で為替と財政、金融政策の関係を分析した。80年代の米レーガン政権の財政政策の後ろ盾にもなった。

欧州には公私ともに思い入れがあったのだろう。最近は伊中部シエナの邸宅で過ごしていたと欧州メディアは伝えた。(欧州総局編集委員 赤川省吾)