世界経済、21年6.0%成長 IMFが見通し上方修正
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN05CSW0V00C21A4000000/
保存日:2021/4/6 21:30 (2021/4/7 5:17 更新) [有料会員限定]
【ワシントン=大越匡洋】国際通貨基金(IMF)は6日改定した世界経済見通しで2021年の成長率見通しを6.0%とし、前回1月の予測から0.5ポイント引き上げた。一時的な景気過熱を指摘する声も出るなか、世界は急回復する景気の勢いを御しながら、成長の持続力を高める政策へ軸足を移す難しい局面に入った。
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6%成長が実現すれば現行のIMF統計で遡れる1980年以降で最高となる。世界銀行の同様の統計でみると73年以来の高い伸びだ。
新型コロナウイルス禍で20年がマイナス3.3%成長に落ち込んだ反動の面はあるものの、ワクチン普及や米国などの積極的な財政出動が押し上げる。コロナ禍前の3%台半ば(15~19年の単純平均)と比べ伸び率が拡大する。22年は4.4%に鈍る見通しだ。
米国の21年の成長率は6.4%と1.3ポイント上方修正した。1月に発足したバイデン政権が1.9兆ドル(約200兆円)の経済対策を実現した効果を加味した。中国とともに世界経済をけん引すると指摘する。
19年の世界の国内総生産(GDP)の水準を100とすると、21年は102台と危機前の水準に回復する。
コロナ禍の前、IMFは20年の世界経済の成長率を3%台と予測していた。それが逆にマイナス3.3%に落ち込んだ。危機前の水準を回復するだけではかつて想定した成長軌道には届かない。
一方で世界経済が一時的に過熱する恐れは高まった。市場の関心は米国の金融政策の動向に移っている。米連邦準備理事会(FRB)は21年の成長率がIMF予測とほぼ同じ6.5%になるとの見通しをまとめつつ、少なくとも23年末までゼロ金利を維持する方針を示している。
FRBは一時的な物価上昇を容認する構えで臨む。景気の過熱をうまく制御できなければインフレを招き、後から急激な利上げを迫られ、新興国からの資金流出など経済の混乱を世界に広げかねない恐れをはらむ。株式市場などのバブル懸念への対応も重みを増す。
政策主導の需要回復に供給が追いつかないリスクもある。世界的な半導体不足に自動車は減産を迫られ、米中の対立も深刻だ。供給の目詰まりから生産の停滞が長引くことで立ち直りつつある雇用情勢に再び悪影響がおよぶ恐れがある。
IMFは世界経済の成長率は中期的に3.3%に鈍ると予測した。コロナ禍は完全に終息したわけではなく、先行きの不確実性はなお色濃い。