ダウ最高値更新、陶酔相場は終わらない (NY特急便)(写真=ロイター)
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0600J0W1A400C2000000/
保存日:2021/4/6 7:28 [有料会員限定]
5日の株式市場ではダウ平均とS&P指数がそろって最高値を更新=ロイター
米国株式相場が再び勢いづいてきた。5日の市場ではダウ工業株30種平均とS&P500種株価指数がそろって史上最高値を更新し、主要業種別では金融とエネルギーを除く全セクターが上昇した。景気急回復期待を背景に、格付けの低い「低クオリティー」銘柄にも資金が流れ込む。
「米株の金利離れが株買いを促している」。米サスケハナ・ファイナンシャル・グループのデリバティブ戦略共同責任者、クリストファー・マーフィー氏は5日の相場についてこう解説した。雇用統計をはじめ景気の急回復を示す経済指標が相次ぎ、米長期金利は1.71%台で推移する。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ前倒し観測が強まりそうだが、相場は崩れなかった。
マーフィー氏が米長期金利とナスダック総合株価指数に連動する先物の相関関係を調べたところ、足元で正の相関(株価上昇と金利上昇が同時に発生)になっていた。3月は金利上昇でハイテク株の割高さが意識され、売られやすくなっていた。正の相関になるのは2月以来だ。同氏は「投資家は金利上昇を経済の強さを示すサインと捉えるようになったため」とみる。
テスラ、アルファベットは4%高、マイクロソフトは3%高……。5日の米株市場では大型ハイテク株が買われた。ハイテク銘柄は新型コロナウイルスまん延による事業への影響が少なかったり、在宅勤務の恩恵を受けたりしたため、コロナ相場初期の「勝ち組」だった。3月は勢いがとまっていたが、株の金利離れが追い風になる。時価総額の大きいハイテク株の上昇は市場の雰囲気を明るくする。
一方、コロナ直撃銘柄への買いも止まっていない。5日のS&P500種株価指数の構成銘柄をみると、上昇率首位はクルーズ船運営大手のノルウェージャンクルーズライン・ホールディングス株で7%高。3位にはカジノ運営MGMリゾーツ・インターナショナル(5%高)が入った。この日の値動きだけをみれば、コロナ恩恵銘柄も打撃銘柄も買われる「全部買い」の様相だ。
「投資家心理の陶酔状態がさらに進んでいる」。バンク・オブ・アメリカのストラテジスト、サビータ・スブラマニアン氏は1日のリポートでこう指摘した。例示したのはS&Pグローバル・レーティングの格付けに基づいたパフォーマンス比較。バンカメのアナリストがカバーする「シングルB」の以下の銘柄群は、「シングルBプラス」以上の銘柄群を年初来で2.8%上回った。
バイデン政権による巨額財政やコロナワクチンの接種加速は、経済本格再開の前倒し期待を生み、格付けの低い「低クオリティー銘柄」への買いにつながった。こうした企業群にはカジノやクルーズといったコロナ打撃銘柄も含まれる。陶酔状態にある投資家は、変異ウイルスによる感染再拡大といったリスクには目をつぶっているようにみえる。
米国市場では来週から2021年1~3月期決算の発表シーズンが本格化する。金融情報会社リフィニティブが主要500社の市場予想を集計したところ、純利益の増益率は2割を超える見通しだ。モルガン・スタンレーは足元の株価に好業績は織り込み済みで、むしろ「期待外れ」に終わるリスクを指摘する。リスクとして挙げたのは、サプライチェーン(供給網)問題による原材料価格の上昇や売上高計画の未達だ。
もっとも「期待外れリスク」が意識されていても、株高基調は変わりそうにない。モルガンはコロナや供給網問題に影響されにくい「高クオリティー銘柄」へのシフトを推奨した。行き場のないマネーは銘柄入れ替えを繰り返すしかない。かくして陶酔相場は続いていく。
(ニューヨーク=宮本岳則)