外国株投信の20年度流入額、過去最大の5兆円
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB019GQ0R00C21A4000000/
保存日:2021/4/2 20:30 [有料会員限定]
日本の個人投資家の成長株志向が強まっている。2020年度は外国株で運用する投資信託への資金純流入額が約5兆円となり、遡れる1997年度以降で最大となった。投資家が中長期の成長期待を持つ米国のハイテク株を組み入れる投信への資金流入が目立つ。半面、外国債券など利回りを重視する投信からは資金が流出した。
三菱アセット・ブレインズがまとめたデータによると、上場投信(ETF)を除いた公募株式投信のうち、外国株式で運用する投信には21年3月末までの1年間で約5兆1600億円の資金が流入した。流入額は集計を始めた1997年度以降で最大。公募投信全体の残高に占める外国株投信の比率は初めて3割を超えた。
流入額が最も多い外国株投信は「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド」。9000億円超が流入して資産残高は1兆円を超えた。ESG(環境・社会・企業統治)の取り組みで評価が高く、持続的に成長すると期待される銘柄に投資する。
2月時点の保有銘柄上位には米マスターカードや米アマゾン・ドット・コム、中国オンライン教育大手のTALエデュケーションなどが並ぶ。
20年7月設定の「デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド」にも5000億円超の資金が流入した。非接触型のビジネスに特化した企業の株式を組み入れる。オンライン決済大手の米ペイパル・ホールディングスや動画配信の米ネットフリックス、中国のネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)といった企業が保有銘柄の上位にある。
米国の主要株価指数、S&P500種株価指数に運用成績が連動する投信への流入も目立つ。新型コロナウイルス下での米国株相場をけん引する米アップルや米マイクロソフトといった大型株の中長期的な上昇期待が背景にある。
東京都内在住の個人投資家(34)は「世界経済の成長を取り込むためにも外国株への投資は必要。特に米国株はハイテク関連など成長株が多く、日本株より中長期で値上がりするとみている」と話す。国内株式で運用する投信からは1年間で1.7兆円超が流出した。
個別銘柄を選別するアクティブ型の投信と比べ、指数連動型の投信は投資家の保有コストが低い。コスト意識が高い若年層の間では指数連動型投信を非課税口座を通じて購入する動きが広がっている。
毎月一定額を投資するつみたてNISA(少額投資非課税制度)の口座数は20年9月末時点で1年前比61%増の274万。このうち7割を40代以下が占める。
楽天証券経済研究所の篠田尚子ファンドアナリストは「現役世代の若年層は長い期間をかけて運用でき、リスク許容度が高い。つみたてNISAを通じて外国株式に投資し、中長期でリターンを求める動きにつながっている」と指摘する。
半面、海外の国債やハイイールド(高利回り)債などで運用する投信は約9100億円の資金純流出となった。従来は中高年層を中心に分配金利回りの高い商品が買われてきた。金融庁がファンドの組み入れ資産の収益を大きく超えた分配金の支払いを問題視し、金融機関が販売を手控えていることが響いた。
もっとも、個人の人気が高まっているテクノロジー関連の銘柄を組み入れる投信は、期待先行で買われている面がある。一部の投信に資金が集中する傾向もみられる。急激な金利上昇など市場環境の変化が起きれば、マネーが逆流するリスクもはらんでいる。