コニカミノルタ、膨らむ無形資産 生かすカギはアマゾン
作成者:
ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD242TB0U1A320C2000000/
保存日:2021/4/1 2:00 [有料会員限定]

コニカミノルタがバイオヘルスケアで新たな動きを見せる。3月10日、子会社が米アマゾンから投資を受け、医療データ基盤の整備に取り組むと発表した。2017年に米医療会社2社を買収したが、自己資本の6割超に膨らんだ無形固定資産に向ける市場の視線は厳しい。重い資産を企業価値を高める宝に変えられるか。

「アマゾンがクラウドのユーザーに投資する例はまれ。重要な専門領域と認識してもらっているのでは」。コニカミノルタのヘルスケア領域を担当する藤井清孝専務執行役は3月の事業説明会でこう話した。

アマゾンのクラウドサービスを手掛けるアマゾン・ウェブ・サービスがコニカミノルタ傘下の医療子会社、コニカミノルタプレシジョンメディシン(KMPM)に投資する。診断、製薬、臨床研究などで収集されたデータを分析するクラウドサービス「アマゾンヘルスレイク」の提供先でもある。半年以上交渉し、5年間の連携と投資の決定に至ったという。

コニカミノルタは17年に遺伝子診断の米アンブリー・ジェネティクスを産業革新機構と約1000億円で共同買収し、バイオヘルスケア領域に本格進出。画像分析を手掛ける米インヴィクロ社も320億円で買収し、2社をKMPMにまとめた。ただ、大型買収の結果、無形固定資産は膨張し、20年3月末時点の無形固定資産は3377億円。帳簿価格の内訳を見ると、17年3月末に比べてのれんが約900億円、テクノロジーが約350億円、ソフトウエアが約80億円それぞれ増加した。

自己資本に対する比率は64%に上昇し、医療関連で積極的なM&Aを手掛けたキヤノン(48%)や富士フイルムホールディングス(45%)より高い水準だ。稼ぐ力が期待を下回れば、減損損失を発生させるリスクにも転じる。

KMPMの足元の収益性は心もとない。20年10~12月期はアンブリー社単体では黒字だが、無形固定資産の償却負担や日本での事業展開に向けた費用もかかり営業赤字。市場はコニカミノルタの企業価値を測る上で、膨らんだ無形固定資産をリスクとして織り込んでいる。コニカミノルタのPBR(株価純資産倍率)は0.6倍で、競合他社に比べ見劣りしている。無形資産が企業価値にプラスとなるには「売上高、利益のもう一段の成長が必要となる」(みずほ証券の森貴宏シニアアナリスト)。

KMPMの主力市場である米国では同社が手掛ける遺伝子検査サービスでは、がんの罹患(りかん)リスクを判定する「ケアプログラム」の利用者が増え、検査受託数は19年初から2倍近くに増えている。それでも規模でまさるミリアド・ジェネティクス社、インビティ社などが上場してビジネスを手掛け、競争は激しくなっている。

そうした中でアマゾンとの連携は大きな武器になる。同社のクラウドサービスを利用すれば、遺伝子情報のストレージ(記憶)や分析にかかる費用を抑え、サンプルあたりのコストを4分の1程度に圧縮できる見通し。米国市場に根ざしたアマゾン側から投資を受けたことで同社サービスの顧客製薬企業への販路開拓やデータ面での提携などにもつながる。

コニカミノルタは21年3月期の売上高が275億円(見通し)のKMPM部門を23年3月期には1.9倍、26年3月期には4倍とする青写真を描く。藤井専務執行役は「売上高の5年平均成長率は少なくとも20%以上。この水準を達成しないと成長していると言えない市場だ」と話す。だが、市場参加者は「売上高4倍の計画に市場がコンビクション(確信)を得るには、21、22年度の目標達成が前提」(モルガン・スタンレーMUFG証券の小野雅弘アナリスト)と慎重な見方を崩していない。

コニカミノルタは22年3月期から2年で1500億円の営業キャッシュフローを稼ぎ、そのうち株主還元や借り入れの返済などに550億円を充てる計画だ。通常の設備投資計画900億円を加味すれば、戦略投資に充てられる原資は50億円程度。自社で捻出するキャッシュ余力が限られる中で「外部資本導入の可否や規模が注目される」(SMBC日興証券の桂竜輔シニアアナリスト)ことになる。

KMPMは「売上高の成長を第一に追加の投資を惜しまない」(藤井氏)考えで、M&Aも視野に入れるという。投下資本の捻出から、コスト管理まで難しいかじ取りを迫られる。その難路を越えることができるか。アマゾンとの連携を生かせるかどうかが、その道のりの第一歩となる。(江口良輔)