中国政府、アリババにメディア売却要求か、米紙報道(写真=共同)
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM15BES0V10C21A3000000/
保存日: 2021/03/16 8:27

2021/3/15 23:30 (2021/3/16 5:15 更新) [有料会員限定]

アリババグループの本社=2020年11月、中国浙江省杭州市(共同)

【北京=多部田俊輔】中国政府が中国ネット大手のアリババ集団にメディア関連の資産を処分するように要求したことが明らかになった。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが15日、報じた。

アリババは香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)を保有する。アリババの解体につながるだけでなく、SCMPを中国の国有企業に売却すれば、香港の言論にも影響が出そうだ。

アリババはネット通販から事業領域を拡大し、金融会社アント・グループや大手メディアも抱えている。中国社会への影響力が大きい企業であることから、中国政府がアリババの影響力をそぐ狙いも透けて見える。

アリババは2016年にSCMPを買収したほか、中国の動画配信サービス大手の「優酷土豆」を傘下に収め、中国版ツイッターとよばれる「新浪微博(ウェイボ)」や映画製作大手の「華誼兄弟」、動画配信大手「ビリビリ」などにも出資する。

多くの国有メディアとも提携しており、そのグループ企業に出資している。中国メディアによると、国有メディア大手、上海文化広播影視集団傘下の「第一財経」のグループ企業や、有力テレビ局として知られる湖南電視台のグループ会社にも出資している。

アリババはネット通販を柱に金融やメディアも総合的に抱えるネット大手だが、創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が2020年10月に「良いイノベーションは監督を恐れない」などと当局批判とも受け取れる内容の発言をしてから、中国当局の姿勢が一変して厳しくなったとされる。

傘下のアントは20年11月に予定されていた上場が延期となり、同年12月には独占禁止法の疑いでアリババが当局の捜査を受けた。21年3月12日にはアントの最高経営責任者(CEO)だった胡暁明氏の辞任が明らかになった。

中国共産党はメディアを「党の喉(のど)と舌」と位置づける。習近平(シー・ジンピン)指導部はメディアを起点にネットの情報統制を強めていることから、民間企業のアリババによるメディアの活用に難色を示した可能性もある。

地方政府関係者は「アリババのグループ全体に対する(当局の)姿勢は厳しくなっており、メディア資産の売却はその一環だろう。メディアを含めたグループの解体に向けた動きが始まった可能性もある」と指摘する。