アプリ自作、私もできた 子育てママや学生などが公開
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGG16BMO0W0A211C2000000/
保存日: 2021/03/15 19:23
2021/3/13 11:00 [有料会員限定]
プログラムの知識がなくてもスマートフォンなどのソフトウエアを開発できる技術「ノーコード」を使い、アプリやサービスを作る例が増えている。子育てママは飲食店の紹介、学生は大学の情報を提供するアプリを作った。コロナ禍に促された格好で、誰でもサービスを自作できる時代が訪れている。
西脇さん(左)は飲食店アプリのアイデアを思いついた3日後には公開
「飲食店も近所のママも困っていて助けたかった」。西脇智子さんはノーコードを使い、東京都稲城市の持ち帰りができる飲食店などを紹介するアプリ「いなぎお弁当マップ」を自作した。2月、地域の課題解決をテーマにした音声交流サイト(SNS)「クラブハウス」の集いで取り組みを話すと注目を集めた。その後も話を聞きたいという依頼が届く。1月の緊急事態宣言の後には「何度も使っていると声をかけられた」と言う。
2020年2月、新型コロナウイルスの感染が広がり、飲食店の客は激減した。学校が休校し、主婦の食事を作る負担が増したころ、西脇さんは知人からノーコードを使いアプリを自作できるソフト「グライド」があると聞いた。アプリ開発の経験はないが、考えるよりも先に試すと半日で原型ができたという。3日後には公開した。
人口約9万人の稲城市で最大で月1万人が利用した。西脇さんは「もっと良いものはいくらでも作れるが、求められるものをいち早く出すことだけを考えた」と強調する。
ノーコードとはその名の通り、コンピューターへの命令文であるコードを書かずに、あらかじめ用意されたプログラムのパーツやツールを組み合わせるだけでアプリなどを自作できる技術だ。対応するソフトが公開されており無料のものもある。
専門知識がなくても使える手軽さが売りだ。初心者がプログラミングスクールに通って、アプリを開発できるようになるまでに半年かかるといわれる。ノーコードを使えば難しい場合で1~2カ月、簡単な場合は数日で作れるようになるという。
コロナ禍の不便や不自由を補おうとノーコードの利用は広がった。企業がサービスを開発するのを待っていては時間がかかるし、利用者の細かい要望にまで目が届かない。当事者がすぐ開発できることが重要だった。
明治大の学生、菅沢孝平さんはコロナ禍で大学に行けず、情報を得られない新入生などに、サークルや授業、ゼミなどの情報を紹介するアプリを20年10月までに公開した。
プログラミングは「学んだが挫折した」経験があり、苦手意識があった。それでもグライドならば使えそうに感じて取り組むと、1週間でアプリができた。菅沢さんは「開発にかかる時間が短いので利用者を増やすのに時間を割けた」と話す。
仕事に役立つ例もある。兵庫県加古川市の職員、多田功さんは特別定額給付金を申請する独自システムを開発し、20年5月に同市が採用した。政府の専用サイトと異なりマイナンバーカードが不要で、事務処理が楽になった。同市では政府専用サイトの3倍以上使われた。多田さんは申請業務を担っており「当事者が開発すれば使いやすいものを生み出しやすい」と言う。
ノーコードのオンラインサロン「NoCodeCamp」を運営する森岡修一さんは「今後はノーコードのようにコンピューターが人に合わせるようになる」と指摘する。優れたアプリを開発するには、プログラム技術よりも課題を解決する発想力が必要になるという。