住宅高値圏 ローンに工夫
作成者:
ソース: https://www.nikkei.com/article/DGKKZO69925720S1A310C2PPM000/
保存日: 2021/03/14 0:40
住宅価格が高止まりしている。在宅勤務の広がりなどで住環境を重視する人が増え、低水準の住宅ローンの金利も購入を後押ししている。もっとも住宅に使うお金が増えれば、その分、家計の余裕はなくなりやすい。住宅を購入する際に欠かせないローンの基礎知識についてまとめた。
「新型コロナウイルスをきっかけに住宅購入を考える人が増えたようだ」。インターネットで住宅ローンの相談を受けるMFS(東京・千代田)の塩沢崇取締役はこう話す。同社のサービス利用者は昨年春の緊急事態宣言を境に急増。1カ月の利用者が以前の2倍以上に増えたという。金融機関には「2020年度の融資実績は件数、金額共に前年度を上回りそう」(三井住友銀行)との声もある。
根強い需要は物件価格にも反映される。東京カンテイ(東京・品川)によると、首都圏の20年の新築マンションの平均価格は6055万円と前年比2.6%のプラス。坪単価は過去10年で6割上昇した。地域差はあるものの、全国的には都市部の物件価格は高値圏が続く。新築価格の上昇を背景に、中古市場の価格も上がっている。
住宅購入は通常の商品と大きく異なる点がある。一つが物件の価格以外の費用が大きいこと。例えば5100万円の物件では「保証料や税金、保険料、手数料などの諸費用が250万円ほどかかる」(ファイナンシャルプランナー=FP=の竹下さくら氏)。購入した後には税金や修繕費、マンションなら管理費なども毎年必要だ。
もう一つが購入する際の条件などにより、実際の支払額や負担感が変わること。特に住宅ローンは金利のタイプなどで最終的な支払利息は大きく変わる可能性がある。物件価格の上昇に伴い借入額は膨らみやすくなっている。今の環境で5000万円を借りて35年で返済すると支払利息は400万円を超す。慎重に検討したい。
住宅ローンの金利のタイプは大きく3つある。まず、借入期間中の金利が変わらないのが「全期間固定型」だ。最初に返済総額が決まるので管理がしやすいが、他のタイプに比べ金利水準は高めだ。「変動金利型」は半年ごとなど基準の金利に合わせて金利を見直す。金利水準は固定に比べ低いが、将来、金利が上がる可能性がある。「固定金利選択型」は5年、10年といった期間、金利を固定し、その後は再度、金利タイプを選ぶ。
現在、多くの人が選ぶのは変動金利型だ。大手銀行などの適用金利は足元で0.5%程度で、他のタイプより多額の融資を受けられるケースも多い。ただ、金利が上昇すれば返済総額が膨らむ。そのため「金利上昇時には繰り上げ返済ができるような、手元資金に余裕がある人に向く」とFPの久谷真理子氏は話す。逆に家計に余裕がなければ固定金利が安全策といえる。変動に比べ金利は高く、足元では金利の基準となる長期金利が上昇しているが、現在の水準は依然として歴史的に低い。
返済方法にも工夫の余地がある。住宅ローンの返済方法には基本的に毎月の返済額が一定の「元利均等」と、毎月の返済額が徐々に減る「元金均等」がある。竹下氏は「元金均等なら将来のリスクを減らしやすい」と話す。
2つの返済方法は毎月の返済額に占める元金と利息の割合が異なる。元利均等では毎月の返済額に占める利息の割合が返済当初により高くなりがち。元金が減りにくいため、変動金利で借りると金利上昇により返済総額が膨らみやすい。変動金利のローンは金利が上がっても毎月の返済額は5年間変わらず、毎月の返済額を見直す際にはそれまでの1.25倍を上限とすることが多い。毎月の負担が急に重くなるのを防ぐ仕組みだが、仮に金利が急ピッチで上がると返済額に占める利息の割合が高まり、元金の返済が進まなくなる。
その点、元金均等返済は当初から同じペースで元金を返済する。元金が着実に減るため金利が上昇しても影響を抑えやすい。竹下氏の試算では借入額5000万円、金利が年0.475%で一定なら、元金均等のほうが11万円利息が少ない。途中で金利が上がれば、その差は広がる可能性がある。元金均等は扱わない場合もあるので「取り扱う銀行を調べて検討してほしい」(竹下氏)。
購入時の自己資金の額もローンの条件を左右する。FPの久谷氏は「少なくとも物件価格の1~2割程度の頭金を確保したい」と話す。一定の頭金があれば、住宅ローンの金利が低くなる商品があるほか、ローンの保証料を抑えられることもある。
(川本和佳英)