投資実力者が使う「底入れ判定法」 コロナで暴落時も有効 実力者に学ぶ 波乱相場の乗り切り法(3) – 日本経済新聞
作成者:
ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB286VL0Y4A520C2000000/
保存日: 2024/05/29 7:55
いいえ
写真はイメージ=PIXTA
急騰と急落を繰り返して方向感の定まらない足元の日本株相場にどう対処すればいいのか。有力個人投資家の実践例を学ぶ連載の最終回は、コロナショックでも有効だったと実力者たちが振り返る相場底入れの判定法を解説する。
個人投資家の実力者たちは様々な判定法で相場の底入れを察知している。だが、2020年に起きたコロナショックでは、多くの判定法で底入れのサインが出ても暴落が止まらず、買い向かった実力者たちも痛手を被った。
兼業投資家のたーちゃんさん(ハンドルネーム)はその一人。従来は「騰落レシオ」という指標を使って相場の状態を判定していた。騰落レシオは、一定の期間に値上がりした銘柄の数を値下がりした銘柄の数で割って100を掛けて算出する。算出期間は25日間を採用することが多い。
たーちゃんさんは「旧東証1部上場銘柄の25日間の騰落レシオが60%を下回ったら買い向かう」ことをルールとし、コロナショックの最中にも同様の行動を取った。だが、暴落は止まらなかった。「運用資産は年初に比べて最大で32.3%も減少した。これほどの大負けは初めてだった」と振り返る。
【この連載の最新記事一覧】
• (2)資産10倍増の億万投資家 チャートで暴落の直撃を回避
• (1)コロナ禍で奏功した損切り 今年の調整局面でも有効
新たなモノサシを模索
従来のモノサシが機能しなかったことから別の判定法を模索した。注目したのはコロナショックによる暴落の最中に出た異常値だ。ストップ安となる銘柄が激増し、その数は200に上った。この異常値が出た日は旧東証1部の売買代金が4兆8923億円と、旧東証1部上場企業の時価総額の1%に相当する規模に膨らんだ。
「これらの異常値から、その日が投資家の投げ売りが集中したセリングクライマックス(売りの最終局面)だったとみている。ストップ安銘柄が200、旧東証1部から衣替えした東証プライム市場の売買代金が上場企業の時価総額の1%。この2つの目安は、暴落相場の新たな底入れの判定に応用できそうだ」と話す。
一方、個人投資家向けの投資教育サイト「アイトラスト」を運営するインベストラスト代表の福永博之さんは。「初心者にも使いやすいボリンジャーバンドは、コロナショックでも有効だった」と語る。
ボリンジャーバンドとは統計学を応用した指標で、過去の株価の動きを基に「上下の株価は大体これくらいに収まる」という範囲を示す。移動平均線からプラスとマイナス方向に1σ(シグマ)、2σ、3σと複数の線が描かれ、その範囲は株価の膠着時には狭く、乱高下する時には広くなる。
通常は上下2σの間に収まることが多く、2σを超えた水準が上値と下値の目安になる。「月足でマイナス3σに到達すると反転する傾向にあるので、要注目だ」(福永さん)
福永さんは、複数の移動平均線の位置関係の比較も依然として相場のトレンドの判断に使えると指摘する。下落相場では期間の長い移動平均線から上に並ぶ形になり、逆に上昇相場では期間の短い移動平均線から上に並ぶ形になる。
チャートは、リーマン・ショックが起きた08年9月から翌年6月までの日経平均の推移を示す。暴落が始まってから09年3月に2番底を付ける前までは、3本の移動平均線が上から期間の長い順に並ぶ形が続いている。
そして2番底を付けた後に、3本の移動平均線が上から期間の短い順に並ぶ形に転換している。これは上昇トレンドに本格転換したサインとみることができそうだ。
株式評論家のこころトレード研究所所長・坂本慎太郎さんは、「Bコミ」というハンドルネームの個人投資家としても知られる。その坂本さんは東証プライム上場企業の平均PBR(株価純資産倍率)に注目している。
「旧東証1部上場企業の平均PBRが1倍を割れると株価が下がりにくくなるという現象が、コロナショックの時にも見られた。市場再編後の今では、東証プライム上場企業の平均PBRの1倍割れが目安として機能する」という見方を示す。
(中野目純一)
[日経マネー2024年7月号の記事を再構成]
日経マネー 2024年7月号 変調相場では銘柄選別が肝心!「厳選 お宝株16」
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP(2024/5/21)
価格 : 840円(税込み)
この書籍を購入する(ヘルプ): Amazon.co.jp 楽天ブックス