いつからもらえる? 年金をめぐる素朴な疑問を解消 年金丸わかりガイド(4) – 日本経済新聞
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB0706I0X00C24A4000000/
保存日: 2024/04/10 8:28

写真はイメージ=PIXTA

2024年は年金制度にとって大切な年になる。5年に1度の「財政検証」があるからだ。財政検証とは何のことで、どんな意味があるのか? この連載では7回にわたり財政検証の内容や年金制度の改正の行方、制度の仕組みなどを解説していく。4回目は年金をめぐる素朴な疑問を、社会保険労務士の井戸美枝さんに聞いた。
Q 定年退職後に、すぐ受給可能?
A 厚生年金や国民年金の受給開始時期は60歳から75歳の間で、1カ月単位で選べる。ただし、受給開始年齢は原則65歳となっており、それより前に受け取り始めると、前倒しの期間に応じて65歳から受給予定の年金額が減額される。60歳受給開始だと24%の減額となり、減額された年金額が一生続く。繰り上げ受給の申請をすると撤回はできないため、老後のマネープランと照らし合わせて慎重に検討したい。

注)▲はマイナス

初回は早くて3カ月後

Q 年金は65歳になったらすぐにもらえる?
A 結論から言うと、すぐにはもらえない。年金の場合は請求手続きが必要。その書類が65歳の誕生日の3カ月ほど前に届く。ただし、請求を受け付けるのは65歳の誕生日の前日以降。誕生日の前日に書類を提出して問題なく受理されたとしても、初回の年金が振り込まれるのは3カ月後くらいになる。
年金請求の手続きは不慣れな人にはハードルが高く、誤記入や書類の不備などで再請求となるケースが非常に多い。そうなると初回の振り込みがさらに遅くなってしまうため、書類を提出する際は郵送でなく、その場でチェックしてもらえる年金事務所で相談、申請するのがお勧めだ。

年40万円の手当ても

Q 年金にも「家族手当」があるって本当?
A 受給が始まる65歳時点で扶養する65歳未満の配偶者や18歳到達の年度末までの子供(障害1、2級の子供の場合は20歳未満)がいる人には、「加給年金」という年金版の家族手当が加算される。ただし、受給者本人が厚生年金に20年以上加入していることが条件だ。
加給年金額は毎年見直され、配偶者の場合、2024年度は特別加算込みで40万8100円。注意が必要なのは厚生年金の繰り下げ受給を行う場合で、繰り下げると厚生年金にひも付く加給年金が受け取れなくなってしまう。国民年金だけ繰り下げれば、加給年金への影響はない。

Q 受給者(夫)が年金受給中に亡くなったらどうなる?
A 夫が元会社員なら、妻は夫が受給していた老齢厚生年金の4分の3の「遺族厚生年金」を受け取れる。ただし、その時の年齢によって妻の受給額は変わる。モデル年金世帯だと、夫の死亡時に妻が65歳未満で自分の年金を受給していない場合、妻は遺族厚生年金に加えて中高齢寡婦加算(※)が受け取れる。妻が65歳になっていたら、遺族厚生年金と自分の老齢基礎年金を受給する。老齢基礎年金を満額受給できる妻(加入期間が40年)なら、中高齢寡婦加算と比べて受取額が20万円ほど多くなる。
(※)中高齢寡婦加算=18歳到達の年度末までの子供がいない40歳以上65歳未満の妻を対象に、遺族厚生年金を補完する加算金。2024年度は61万2000円

注)モデル年金世帯の例、老齢基礎年金や中高齢寡婦加算は2024年価格

厚生年金加入歴のある妻は、自分の老齢厚生年金(100%)に加え、下図の3つのうち一番高いものを反映した額となる。

監修者

井戸美枝さん

社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー。講演や執筆、メディア出演など幅広く活躍。年金や社会保障、身近な経済問題について分かりやすい解説に定評がある。国民年金基金連合会理事。日本FP協会理事。近著に『親の終活 夫婦の老活』(朝日新書)、『フリーランス大全』(エクスナレッジ)。
(ライター 森田聡子)
[日経マネー2024年5月号の記事を再構成]
【連載「年金丸わかりガイド」記事一覧】
• (1)24年は年金財政検証の年 制度の「健康状態」を診断
• (2)進む少子高齢化 それでも年金財政が悪化しない理由は?
• (3)厚生年金の適用が再拡大? 次の年金改正を専門家が予測