「新NISAの買い」を待ち伏せる 年内買い戦略は有効か – 日本経済新聞
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB061OB0W3A101C2000000/
保存日: 2023/11/10 18:31
2024年1月に始まる新しい少額投資非課税制度(NISA)。年明けから投資を始める人が増えそうだが、それに「先回り」すればさらに利益を得られないだろうか。プロと共に作戦を練った。
新NISAでは、個別株投資に使える成長投資枠だけでも、1人1200万円までの投資が無期限で非課税になる。一見すれば、新規投資は1月を待つ方が得だ。
しかし、ここはあえて「年内に買う」戦略を考えたい。新NISAで新規に投資をする人が増えれば、それ自体が株価に追い風となり得る。新NISAの成長投資枠は、14年開始の現NISAと比べても格段に金額が大きく、仮に新たに投資を始める人数が多ければ、その買いは追い風として無視できない。1月になれば買いが入る可能性が高い銘柄があるなら、先回りで年内に買うのは合理的だ。
さらに、株式市場のアノマリー(経験則)として、夏から10月頃までは株価が調整しやすく、逆に11月から年末年始にかけては上昇しやすい時期として知られる。今年も10月まで日本株は下落基調だったが、11月に入り急反発中だ。
イベント投資にたけた個人投資家のまつのすけさん(ハンドルネーム)は「季節的特性に加えて環境も悪くない。インフレで名目GDP(国内総生産)の伸びが大きく、下期は上方修正が増えそうだ」と語る。今買えば年末相場の恩恵と、新NISAの買いの恩恵がダブルで受けられる可能性があるのだ。
加えて新NISAの非課税メリットも得たいなら、1月に入ったら課税口座で売り、同時に新NISA口座で買い戻すだけでいい。
14年は高配当株が買われた
問題はどんな銘柄を買うかだ。一般論として、個人の買いで上がりやすいのは、時価総額の小さな銘柄。超大型株がいくら新NISAで人気化しても、それだけで株価が急上昇するとは考えにくい。
しかし一方で、個人の売買だけで動くような小型株に、新NISAの買いが集まることも考えにくい。新たに流入する資金の出し手は、投資の初心者や初級者だからだ。高いリスクを取ったり、隠れた掘り出し銘柄を探したりするのは難しい層と考えられる。
実際にどんな銘柄が新NISAで買われるのか。この点について実は、プロやスゴ腕個人投資家たちの意見がほぼ一致している。高配当株と低PBR株だ。まつのすけさんは「現行の一般NISAが始まった2014年当初、NISAで初心者に主に買われたのは配当利回りが高くPERやPBRは低い、メジャーな大型株だった」と振り返る。
例えばSBI証券が当時発表していたNISA口座での約定金額ランキングには、武田薬品工業やキヤノンなどの知名度の高い高配当株が並んでいた。高配当株は価値の分かりやすさと低めのリスクに加え、22年以降は値上がり率も際立っており、初心者に注目される要素がそろっている。
低PBR株も「値が低ければ割安で下値が堅い」という分かりやすさが初心者に好まれそうだ。マーケット・ジャーナリストの和島英樹さんは「東証がPBR1倍割れ企業に改善を要請していることで、上場企業側にも『今度こそ低PBRは改善するべきだし、改善は可能だ』という意識が強まっている。当面は株価上昇要因であり続ける」と予測する。
株式市場のデータ分析にたけた智剣・Oskarグループの大川智宏さんも、「14年の年間を通じて、高配当株と低PBR株はいずれも、他と比べて上昇率が高かった」と分析する。
今後についても、高配当株や低PBR株の相対優位は変わらなそうだという。「東証の要請は23年春に出されたため、まだ具体的な対策を十分に打ち出せていない上場企業が多い。中間決算以降に増配などの株主還元強化が増える可能性は高い」(大川さん)
大川さんの分析によると、14年は時価総額の小さな銘柄が有利な傾向も一貫していた。高配当株や低PBR株であれば、マイナーな小型株でも「ランキング上位銘柄」として初心者の目にとまりやすい。「新NISAで買われて上がりやすい」銘柄の一つの正解は、高配当や低PBRと時価総額の低さを併せ持った銘柄かもしれない。
アクティブETFにも注目
また、新NISAに伴う買いは、投資信託やETFを通じても入ってくる。イベント投資が得意な個人投資家の夕凪さん(ハンドルネーム)の注目はアクティブETFだ。「特に低PBR株を対象としたアクティブETFの注目度は高く、組み入れ銘柄を先回り買いする動きもある」と指摘する。
新NISAの買い「だけ」で株価が大きく上がる銘柄は少なくても、「新NISAが追い風になるか」は今後の銘柄選びに不可欠な検討項目だ。次回は上記のようなアイデアに基づく、具体的な先回り銘柄の候補を探していく。
(臼田正彦)
[日経マネー2023年12月号の記事を再構成]
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