米2年債利回り、17年ぶり高水準 利上げ観測が再浮上 – 日本経済新聞
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN17DWK0X11C23A0000000/
保存日: 2023/10/18 7:50

FRB幹部らの発信に対する注目は一段と強まっている=ロイター

【ニューヨーク=竹内弘文】17日の米債券市場で2年債利回りが一時前日比約0.19%高い5.24%まで上昇(債券価格は下落)し、2006年7月以来、約17年ぶりの高水準を付けた。同日発表の米小売売上高が市場予想を大幅に上回る伸びを見せ、米連邦準備理事会(FRB)の追加利上げ観測が再び浮上した。
長期金利の指標である10年債利回りも前日比約0.15%高い4.86%に上昇する場面があった。前日比の上昇幅としては約1カ月ぶりの大きさを記録した。

米商務省が発表した9月の小売売上高(速報値、季節調整済み)は前月比0.7%増となり、市場予想の0.3%増を上回った。7〜8月分も上方修正した。米モルガン・スタンレーのチーフ米国エコノミスト、エレン・ゼントナー氏は「7〜9月期を通じて消費行動の勢いが強まり、10〜12月期にも持続する可能性があることを示した」と指摘した。
米金利先物の値動きから金融政策を予測する「フェドウオッチ」では、年内の追加利上げ確率が4割強となり、34%だった前日から上昇した。イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突による不確実性の高まりからFRBの利上げ観測は一時後退していたが、12日発表の9月の消費者物価指数(CPI)など予想対比で上振れする指標が相次ぎ、利上げ観測は再び台頭している。
10月31日〜11月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えて、FRBは21日から金融政策に関わる対外発信を控える「ブラックアウト」期間に入る。英バークレイズのジョナサン・ミラー氏は「直近の強い経済指標発表により、ブラックアウト前のFOMC参加者からの発信内容に対する関心は一段と高まった」とみていた。パウエルFRB議長は18日、ニューヨークで講演する予定だ。
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• ひとこと解説FRBは積極的な利上げを行い現在の水準は引き締め的というのがコンセンサスとなっている。しかし、米国経済の成長力は強く、消費も堅調だ。住宅ローン金利や融資条件が厳格化し新規購入を抑制しつつあり、過去の現金給付を使い果たしているのでしだいに景気減速圧力が高まってくると予想されているが、今のところ経済は堅調だ。7月頃から米国の金利が2年や10年といった金利が軒並み上昇している。FRBの利上げまたはより長く高水準を維持という観測を織り込んだだけでなく、ほかの要因もあるようだ。米国の財政悪化による国債発行増加、今後の財政悪化をめぐる共和党強硬派を中心とする下院の対立、そしてFRBによる国債保有の減少だ

• ひとこと解説雇用者数の伸びが予想より強かった米9月雇用統計、インフレ圧力の根強さを示した米9月消費者物価指数、経済の大黒柱である個人消費が依然強いことを示した米9月小売売上高。この「3点セット」が衝撃を与え、FRBによる年内あと1回の追加利上げの可能性を織り込む度合いが上昇。記事にある通り、米2年債利回りは一時5.24%まで上昇した。06年7月以来の高水準である。米国の政策金利であるフェデラルファンド翌日物誘導水準は現在5.25~5.5%。米2年債の足元の水準とあまり変わらない。FRBは(追加利上げの有無はともかく)政策金利をこのまましばらく高止まりさせる、すなわち利下げはしばらく期待薄という読みである。

2023年10月18日 7:25 (2023年10月18日 7:39更新)